個人再生で車を残す方法|引き上げを回避し手元に残したい時の対処法

個人再生をすると車を手放さなければならないの?

自力では完済が難しいほど大きな借金問題に直面した場合、債務整理を通じて借金問題を解決することができます。
特に、「個人再生」という債務整理手続きを選択すれば、借金を元本から5分の1〜10分の1ほどにまで減額することが可能であり、その後の生活が劇的に改善されるでしょう。

ただし、個人再生を行う際には、カーローンの有無や自動車の査定額に応じて、所有している車を手放す必要があるケースも発生します。
生活をする上で車がなくなることのデメリットが大きい場合には、なんとかして自動車を手元に残したいと考えるでしょう。

では、個人再生を行った場合に車を残せるケースと引き上げられてしまうケースはどのような条件で決まるのでしょうか?
また、個人再生をしても車を所有し続ける方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

マイカーを所有していてかつ個人再生を考えている方は、個人再生後の生活への影響も加味して適切な判断をするために、本記事をぜひ確認してみてください。

個人再生と自動車の処分の関係

お気に入りの愛車を手放したくないという方はもちろん、日々の生活(仕事や通院など)に車が必要だという方もいらっしゃるでしょう。
このような場合は、「自分の場合は個人再生をしても車を残せるか?」と確認した上で、車が残せないと思われる場合には「車を残しながら借金問題を解決できる他の方法には何があるか?」を考える必要があります。

個人再生で車を残せるかどうかは、以下の2つのケースに分けて考える必要があります。

車のローンを完済している場合

ローンを完済した車は、間違いなく車の購入者(ローンを払った人)の財産です。
そして個人再生では、基本的に自分の財産を処分する必要がありません。

このため、車のローンを完済しているならば、個人再生をしても車を手元に残すことができます。

しかし、個人再生には「保有資産が多い分だけ最終的な返済金額が上がる」という特徴があります(清算価値保障の原則)。
よって、査定額(評価額)が高い自動車を保有している場合、その車の価値が個人再生後の返済金額に反映されてしまいます。

すなわち、査定額が高い車を持っていると「清算価値」が上昇するため、個人再生後の返済額が上乗せされてしまうリスクがあるのです。

高額な車により個人再生後の支払いが難しくなる場合には、車の処分を検討する必要が生じるかもしれません。

なお、個人再生前に車を処分する場合は、裁判所から「財産隠し」を疑われないように、処分前に必ず弁護士・司法書士に相談をするようにしてください。

車のローンを返済中の場合

ローンを完済していない車の所有権は、所有権留保により未だローンの債権者が持っていることが一般的です。

個人再生をすると、自動車ローンも例外なく減額の対象となります。つまり、ローン債権者(ローン会社やディーラー、信販会社など)は個人再生による減額を受け、当初の約束通りに返済してもらえなくなります。
すると、債権者は所有権に基づいて車を引き上げ、それを売却するなどして少しでも多くの金額を回収しようとします。

つまり、車のローンが残っており所有権がローン債権者にあるような場合は、個人再生により車を手放すことになります。

任意整理の場合は、整理する借金からカーローンを外すことで車の処分を免れます。
しかし、個人再生や自己破産では全ての借金を整理対象とする必要がありますので、ローンを返済中の車は原則として処分されてしまうと考えましょう。

なお、ローンが残っている車が引き上げられるタイミングは、「受任通知」が債権者に届いたとき以降です。
弁護士や司法書士に個人再生を依頼すると、依頼を受けた弁護士・司法書士は、債権者へ案件を受任をした旨の通知を送ります。これが受任通知です。

受任通知を受け取った時点で、債務者がローンを支払いきれずに債務整理することが明らかになり、債権者は車を引き上げる準備を始めるでしょう。

ローン返済中の車がある場合、依頼前に車検証などを持参の上でその旨を説明し、どのように対応するか?を弁護士とよく話し合うようにしましょう。

個人再生後も車を残す方法・手段

このように、自動車ローンの支払い中に個人再生をすると車を引き上げられてしまいます。
しかし、減額率が低い任意整理では借金解決が難しく「どうしても個人再生でマイカーを残したい!」という方もいらっしゃるでしょう。

そこで、個人再生をしながら車を残すために考えられる2つの方法をご紹介します。

家族・親族の支払いで車のローンを完済する

単純な話、車のローンさえなければ、個人再生をしても車が引き上げられるおそれはありません。
すなわち、ローンを完済すれば問題なく車に乗り続けることができるのです。

とは言え、個人再生をするほどお金に困っている状態で車のローンを一括で完済するのは現実的ではないでしょう。

その上、個人再生の前に車のローンを優先的に支払ってしまうことは認められていません。
個人再生では全ての債権者を平等に扱うことになっており、特定の債権者にのみ有利になる「偏頗弁済(へんぱべんさい)=えこひいき的な弁済」は禁じられているのです。

そこで考えられるのは、同居の家族(配偶者・親など)や親族などにローンを肩代わりしてもらう(=第三者弁済してもらう)ことです。
これをすれば、偏頗弁済を回避しつつローンを完済することが可能です。また、名義の変更もないため、裁判所から財産隠しを疑われることもありません。

この場合、支払いをしたのは債務者本人の財産からではなく、家族や親族による返済だとしっかり証明する必要があります。弁護士や司法書士に相談し、アドバイスを受けながら慎重に行うことをお勧めします。

【保証人がカーローンの支払いを続けることも考えられる】
ローンを組む際に保証人を設定している場合、「保証人が今後も月々払っていくから車を引き上げないでほしい」とローン会社に交渉してみる、という手段もあります。
大抵、ローン会社は車を引き上げて換価したうえで残額を保証人に請求してくることが多いのですが、引き上げには手間も時間もかかります。総合的に考えて「保証人が今後支払ってくれたほうがいい」とローン会社が判断した場合、車の引き上げを回避できる可能性があります。

別除権協定を利用する

個人タクシーのように個人で車を使う事業を営んでいる場合、ローンの債権者と交渉して、ローンを従来の約定通りに返済する代わりに車を引き上げないようにしてもらう「別除権協定」を結べることがあります。

別除権協定を利用するには裁判所の許可が必要です。しかし、この許可をもらうのはかなりハードルが高いです。
単に「車がないと不便」などの理由では、裁判所から許可を得ることは難しいでしょう。

さらに、自動車ローンの債権者以外の債権者が拒否した場合は、別除権協定の締結ができなくなってしまいます。

許可や合意を得られる見込みをチェックするためにも、一度弁護士や司法書士に相談をして見てください。

個人再生と車に関するよくある質問

個人再生中にローンを支払っている車はどうなる?

個人再生は原則として財産処分の必要はありませんが、ローンを支払い中の車ならば、個人再生をすることによりローン会社が車を引き上げてしまうケースが多いです。

ローンを完済していない車の所有権は、未だローンの債権者が持っていることが一般的です(所有権留保)。

個人再生をすると、自動車のローンも例外なく減額の対象となります。よって、ローンの債権者は当初の約定通りに返済してもらえなくなることが明らかです。
そこで、債権者は所有権に基づいて車を引き上げ、それを売却するなどして少しでも多くの金額を回収しようとします。

これを回避するには、家族・親族の支払いで車のローンを完済することが最も現実的な解決策となるでしょう。

個人再生で車を残すと返済額が上がる仕組みとは?

個人再生は、裁判所に申立てをして実行するタイプの債務整理です。
借金を大幅に減額してもらい、減額後の借金は返済計画に沿って毎月少しずつ、原則3年程度かけて分割払いします。

個人再生による借金の圧縮後の弁済額の決め方には3つの基準があります。

  • 法律で定められた最低弁済額
    借金の総額によって異なり、例えば借金額が100万~500万円なら、最低弁済額は100万円です。
  • 自分の清算価値と同額(清算価値保障原則
    自己破産によって債権者へ配当される金額以上は、個人再生でも最低限支払わなくてはなりません。
  • 可処分所得の2年分
    可処分所得とは収入から税金や社会保険料などを差し引いた「手取り収入」のことで、この2年分は最低限支払うことになります(給与所得者等再生の場合のみ)。

2つ目の清算価値保障の原則により、査定額(評価額)が高い自動車などを保有している場合、その車の価値が個人再生後の返済金額に反映されてしまいます。

すなわち、査定額が高い車を持っていると「清算価値」が上昇するため、個人再生後の返済額が上がってしまうリスクがあることに注意が必要です。

個人再生中・個人再生後に車のローンは組める?

「車を失っても、新しくローンを組んで購入すれば大丈夫」と考える方もいらっしゃると思います。
しかし、個人再生直後に車を購入することは非常に難しいと言えます。

個人再生をすると、その情報が「信用情報機関」という組織に登録され、消費者金融、クレジットカード会社、銀行などに共有されます。これがいわゆる「ブラックリストに載った」状態で、この状態は個人再生後5~7年程度続きます。

ローンなどを申し込むと、申請を受けた債権者(貸金業者等)は信用情報機関に申込者の情報を照会します。
その際、掲載期間中だと「過去に債務整理をした人」という情報が参照されてしまうため、審査担当者は「この人は返済能力に問題があるのかもしれない」と判断し、ローンの審査に落としてしまうのです。

個人再生によってブラックリストに載ること自体は避けられないので、個人再生後は一律でローンの審査に通らなくなります
車や家を購入するときは、大抵の場合ローンを組みます。よって、新しく車を買う(カーローンを組む)のは難しいでしょう。

ちなみに、カーリースも同様で、ブラックリストに載っていると利用を断られることが大半です。
個人再生後、ブラックリストから削除される5年ほどは、同居家族に車を借りるかレンタカーで生活をすることになると考えましょう。

まとめ|個人再生と車の疑問は弁護士へ

個人再生は、自己破産と違い、手持ちの財産を処分する必要は基本的にありません。
しかし、ローンが残っている車は原則として債権者が引き上げてしまいます。また、ローンを完済済みの車であっても、査定額が高い場合は処分した方が個人再生後の支払いが楽になる可能性があります。

「車を手元に残したい!」と考える場合、自己判断で自動車を処分したり名義変更をしたりすると、裁判所から財産隠しを疑われるかもしれません。
個人再生は、必ず弁護士・司法書士に相談しながら行ってください。

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執筆・監修
服部 貞昭(CFP・日本FP協会認定)
ファイナンシャル・プランナー(CFP・日本FP協会認定)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
東京大学大学院 電子工学専攻修士課程修了

新宿・はっとりFP事務所
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