自己破産における「管財事件」とは?
自己破産は裁判所で行う「債務整理」です。 成功して「免責」の許可を受けることができれば、借金をゼロにすることができま…[続きを読む]
「自己破産をすると借金がゼロになる」
こういった話を聞いたことがある人は多いと思います。
借金で首が回らなくなっている人は、既に自己破産を真剣に検討し、情報を集めているかもしれません。
自己破産に関する情報の中には「自己破産をすると財産を処分される」「持ち家を失う」というものがあります。
果たしてこれは本当なのでしょうか?
ここでは「自己破産をすると持ち家がどうなってしまうのか?」「マイホームなどの財産を処分されるとしたら、それを免れる方法はないのか?」などの疑問について解説していきたいと思います。
自己破産を検討している人で、持ち家がある人はぜひチェックしてください。
目次
まずは、自己破産と財産の処分について解説します。
自己破産という制度を端的に表現すると「自分の財産を処分してお金に換え、債権者に配当し、それでも残った借金はゼロにしてもらう制度」と言うことができます。
「財産を処分して弁済するという最大限の努力をしたので、返しきれなかった分は支払いを免除しましょう」ということだと思ってください。
問題は「一定以上の財産」とは何かということです。
基本的には「ある程度以上高額な財産」ということであり、持ち家や自動車はこの「高額な財産」の代表格なので、よほど価値のないものでない限りは処分される可能性が高いと考えてください。
ちなみに、自己破産の手続きには2パターンあり、どちらを選ぶかは裁判所が決定します。
簡単で費用の安い「同時廃止」という手続きになるよう祈る人が多いのですが、持ち家がある場合は手続きが煩雑かつ費用の高い「管財事件」になってしまいます。
残念ながら自己破産すると持ち家は処分されてしまいますが、その他の財産についてはどうなるのでしょうか?
手元に残せるのは以下のような財産です。
「20万円以下の資産価値とされた物」については、例えば解約返戻金の額が20万円以下の保険などが当てはまります。
価値の低い有価証券類や宝飾品などが当てはまることもあるかもしれません。
また、換金に手間と費用がかかりすぎるものなども、手元に残すことができます。
自己破産を行うと原則的に持ち家は失いますが、ローンの有無によって処分のされ方が変わります。
持ち家にローンがある場合とない場合について、ケース別に説明していきます。
ローンを完済した持ち家は、その人の財産として扱われ、自己破産をする場合は裁判所が処分することになります。
自己破産の手続きでは、家は競売にかけられることになっています。
競売だと市場価格よりも安い価格でしか売れないうえに、公売なので物件の住所などが公開されてしまいます。
競売前に様子を見るために購入希望者が付近を訪れる可能性がありますし、近所の人に競売のことがバレるかもしれません。
また、競売の場合、売却後の引っ越し時期を調整することができず、引っ越し代は全額自己負担となってしまいます。
これを避けるには「任意売却」という方法がおすすめです。
任意売却をすれば持ち家を市場価格に近い額で売ることができ、退去時期もある程度調整できます。
退去に関する費用も軽減できる可能性があるので、競売よりもメリットが大きいはずです。
まだローンを払いきれていない状態で自己破産をする場合、ローンの債権者は債権を全額回収できないことになります。
そこで、債権者は少しでも多く債権を回収しようと、住宅に設定した「抵抗権」を実行します。
抵当権とは、債務者がローンを支払えなくなった場合に、ローンの対象である住宅を処分してお金に換え、ローンの債権者が優先的に弁済を受けられる権利です。
抵当権を実行されると、ローンのある持ち家は抵当権を設定した債権者によって差し押さえられます。
もはや持ち家に住むことはできず、退去を余儀なくされてしまいます。
少し話は逸れますが、賃貸住宅にお住まいの方への情報提供として、自己破産と賃貸住宅の関係についても解説します。
賃貸住宅の場合、家賃を払い続けている限り追い出されることはありません。
裏を返せば、家賃を滞納し続けると、それを理由に退去を迫られるおそれがあります。
ここで問題となるのが「滞納した家賃」です。
自己破産では全ての債権者を平等に扱うことになっているため、特定の債権者にだけ有利になるような返済は禁止されています。
「滞納した家賃を支払わないと追い出される」「でも大家にだけ有利になるような返済はできない」と悩んでしまうかもしれません。
しかし賃貸住宅であっても、家は生活の拠点であり、なくなってしまうと人生に悪影響が発生することは明らかです。
家賃を払わないと追い出されてしまうような事情がある場合、裁判所が家賃の滞納分の支払いを認めてくれることがあります。
だからといって勝手に支払いをすると問題となる可能性があるので、まずは弁護士に相談して、大家に滞納分の家賃を支払っても問題ないか確認をしてください。
原則的に自己破産をすると持ち家は失ってしまいます。
しかし、なんとか住み慣れた家に住み続けたいと言う人も多いはずです。
ここからは、持ち家に継続して住むための方法について解説します。
リースバックとは、投資家などに持ち家を売って、その後は投資家から持ち家を借りて、家賃を支払いながら住み続ける方法です。
名義などは変わってしまうので持ち家ではなくなってしまいますが、同じ家に住み続けられるというメリットがあります。
しかし、売却金額等の問題で、投資家や不動産業者と交渉が成立しない可能性が高いのが欠点です。
任意売却をして他人に持ち家を売るのではなく、親や親戚などの家族に持ち家を買い取ってもらう方法です。
買い取ってもらった後は、その家に住み続けることを許可してもらいます。
いわばリースバックの身内版であり、家賃の融通が効くなどのメリットがあります。
しかし売却する場合、自己破産のときに裁判所が選任する「破産管財人」という人を通さなければ、自己破産で禁止されている「免責不許可事由」に抵触してしまうおそれがあります。
免責不許可事由があると最悪の場合自己破産に失敗し、借金はそのまま残ってしまいます。
また、親族にまとまったお金がないと、そもそもこの方法を採ること自体難しいかもしれません。
債務整理は自己破産だけではありません。
財産を処分しなくて済む債務整理も存在するので、そちらを検討するのも良い方法です。
自己破産以外の債務整理には「任意整理」と「個人再生」があるので、簡単に説明します。
債権者と個別に交渉して利息をカットしてもらう債務整理です。
住宅ローンの債権者とは交渉せず、他の債権者と交渉して成功すれば、借金の総額を減らすことができます。
自動車ローンやクレジットカードの未払いなど、複数の借金を抱えている場合に効果的です。
しかし借金の減額率そのものは低いため、あまりに多くの借金を抱えている人にとっては効果が高くない可能性があります。
個人再生は、自己破産と同じように裁判所に申立てをして行う債務整理です。
借金を平均5分の1程度に減額してもらい、減額後の借金を3年程度かけて分割払いします。
個人再生には通称「住宅ローン特則」という制度があり、これを利用すれば住宅ローンを従来通り支払うことを条件として、持ち家を手元に残すことが可能です。
当然ですが、住宅ローンなしの状態では「住宅ローン特則」を使えません。
住宅ローンを完済している状態で個人再生をすると返済額が上がり、最悪住宅を処分する必要が出てくる可能性があります。
また、個人再生をするためには安定した収入が必要など様々な条件があるため、事前に弁護士とよく相談して判断してもらう必要もあるでしょう。
自己破産をすると持ち家を手放すことになります。
リースバックや親族に買い取ってもらうなどすれば住み続けることは可能ですが、名義変更を避けることはできません。
世の中には持ち家の処分を避けようと、持ち家を配偶者の名義に変更してから離婚して、自己破産後に再婚…という手段を使おうとした人もいるようですが、これは自己破産で禁止されている財産隠しや詐害行為に該当する可能性が高いです。
最悪「詐欺破産罪」になってしまうので、自己破産をするときや大きな財産を動かすときは、必ず専門家である弁護士に相談してください。
弁護士がいれば法律に触れることなく、安全かつ迅速に借金問題を解決できます。
自己破産を自力で行うのは危険です。弁護士に依頼することを強くおすすめします。