免責不許可事由とは?自己破産できない場合もある
借金が膨らんで現実的に返済が出来なくなった人は、債務を解消するために債務整理をする必要があります。 債務整理の中で特…[続きを読む]
借金をどうしても返せなくなった場合、自己破産をすれば返済義務がなくなります。
しかし自己破産には様々なデメリットがあります。
その1つが「官報」や「破産者名簿」への掲載です。
2019年にはネット上に「破産者マップ」なるものが公開され、問題となりました。
破産者マップは個人が勝手に作成したものであり、現在は既に閉鎖されていますが、この騒動で破産した事実が他人に知られる可能性があると認識した人もいるでしょう。
自己破産や借金のことは、できれば秘密にしたいと思っている人が多いはずです。
そこで今回は「破産者名簿」について解説をしていきます。
破産者名簿とはどういったもので、そこに掲載されることにどのようなデメリットがあるのでしょうか?
目次
まずは自己破産の概要と、自己破産に関係のある「官報」や「破産者名簿」について説明します。
自己破産は裁判所に申立てをして行う「債務整理」の一種です。
自己破産に成功すれば借金をゼロにすることができます。
その代わり、自分が保有する財産は一部を除いて処分されてしまいます。処分された財産はお金に換えられ、債権者への弁済に使われます。
借金をゼロにしてもらうことを「免責」と言いますが、自己破産すれば必ず免責の許可を受けられるわけではありません。
借金の原因が浪費やギャンブルである場合や、自己破産手続きにおいて不誠実と見られる行動をとった場合は、裁判所が免責を許可しないこともありえます。
免責を受けられない事情のことを「免責不許可事由」と言います。
免責不許可事由があっても、それが悪質でない場合は裁判官が自己の裁量で免責を許可してくれることがほとんどです。
これを「裁量免責」と呼びます。
自己破産をする前に、自分には免責不許可事由があるのか、ある場合はどうすればいいのかなどを、事前に弁護士と相談してから実際の手続きに踏み切って行ってください。
官報とは、日本国の機関紙です。役所が休みの日以外は毎日発行されており、大きな図書館などで読むことができます。
また、インターネットにも官報は公開されており、直近30日分であれば無料で読むことが可能です。
法令の公布や国会に関する事柄、公務員の人事などが掲載されているほか、裁判に関する事柄が載っています。
そして裁判に関するものとして、自己破産や個人再生のことが公開されているのです。
自己破産や個人再生をすると氏名と住所が官報で公開されてしまいます。
しかし、官報を普段から読む人はほとんどいないので、官報のせいで自己破産したことが友人知人にバレることはほとんどありません。
いよいよ本題の破産者名簿です。
破産者名簿とは、破産申立人の本籍地の市区町村役場で管理されている名簿です。
住民票のある市区町村役場ではなく、「本籍地」である市区町村役場であることに注意してください。
かつては「自己破産手続き中の人」は、全員この破産者名簿に記載されていました。
しかし、法改正が行われ、現在では「自己破産をしても免責を受けられなかった人」のみが破産者名簿に掲載されることになっています。
そのため、ほとんどの人は自己破産の最初から最後まで破産者名簿に掲載すらされません。
また、仮に掲載されたとしても、破産者名簿を閲覧することができるのは役所の一部の人だけであり、一般に公開されることはありません。
そもそも、なぜ破産者名簿というものが存在するのでしょうか?
実は弁護士や司法書士、宅地建物取引主任者、警備員などは、破産して免責を受けていない人(破産者)は就くことができない職業と定められています。
弁護士や警備員など特定の職業に就くためには、破産者でないことを証明する書類である「身分証明書」が必要です。
(※破産者と聞くと「過去に自己破産をした経験がある人」と思う人が多いかもしれませんが、法律の世界では破産者のことを「破産してまだ免責を受けていない人」を指すことになっています。「自己破産をして既に免責を受けた人」は破産者ではないので注意してください。)
該当する職業に就きたい人は、自分で役所に問い合わせて「身分証明書」の発行を申請することになっています。
申請を受けた役所は破産者名簿をチェックし、そこに記載がなければ「身分証明書」を発行します。
「身分証明書」を作成するために必要となるのが、この破産者名簿です。
とはいえ、破産者名簿は一般人の目に届くところには置かれないものであるため、破産者名簿のせいで自己破産のことが周囲にバレることはありません。
また、破産者名簿に載ったとしても、一部の職業に就きたい人以外には実質的なデメリットがありません。
破産者名簿に載るデメリットは「破産者でない」ことを証明する身分証明書を発行してもらえないことのみなので、多くの人にとっては関係がないのです。
自己破産において制限を受ける職業について知りたい方は、弁護士に相談するか、リンク先をご参照ください。
自分で本籍地の役所まで行って「破産者名簿から自分の名前を削除してください」とお願いしても、受け付けてもらえません。
破産者名簿に記載された人が能動的に訴えて破産者名簿から抹消してもらうことはできない反面、一定の条件を満たせば自動的に削除してもらえることになっています。
その条件は以下のようなものです。
免責を受ければ破産者でなくなるので、当然に破産者名簿からは削除されます。
自己破産で免責を受けられず、個人再生に切り替える人もいます。
その場合は、個人再生に成功すれば、自己破産による免責を受けていなくても破産者名簿から削除されます。
破産手続開始決定から10年経てば、免責許可がなくても破産者名簿から抹消されます。
しかし、10年もの間免責を受けられないままでは大変です。
あまり現実的な解決方法ではないので、個人再生をするなど何らかの措置を講じるべきでしょう。
債権者は破産手続によって、債務者から没収された財産から配当を受けることができます。
しかし、債権者全員が配当を受け取ることを放棄して、債務者の破産手続を廃止(終了)することに同意すれば、それによって破産手続は終了し、破産者名簿からも削除されます。
債権者が同意して債務を免除する、破産申立人以外の誰かが破産申立人の代わりに債務を弁済するなどして債務そのものが消滅すれば、もはや支払う債務がないので免責を受ける必要もなくなり、破産者名簿から削除されます。
官報と違って、自己破産に失敗しない限り破産者名簿に自分の名前が記載されることはありません。
ほとんどの人は自己破産をしても破産者名簿に載らないのです。
また、万が一記載されたとしても、破産者名簿を見られるのは一部の役場職員のみです。
一般人が破産者名簿を閲覧できる機会はないので、破産者名簿のせいで周囲に破産者であることがバレる心配はありません。
破産者名簿に載るデメリットは「破産者でない」と証明するための身分証明書を発行してもらえなくなること程度であり、自己破産によって借金をゼロにできるメリットに比べれば、それほど大きなデメリットではありません。
多くの人は自己破産に不安を持っていると思いますが、弁護士に相談することで正確な知識を得られ、不安を解消できます。
借金問題で悩んでいる人、自己破産を検討している人、自己破産について知りたい人は、ぜひ弁護士までご相談ください。