民事再生の流れ、メリット・デメリット|会社を維持しながら債務整理
会社の経営がうまくいかず、どうしても自力での経営再建がうまくいかないというケースがあります。 特に現在は、新型コロナ…[続きを読む]
2020年、未曽有の新型コロナウイルスの影響により、多くの企業の経営が困難になってしまいました。
アパレル業界も例外ではなく、新型コロナウイルスの影響を大きく受けてしまっています。
消費者の中には、
「外に出なくなったから服を買わない」
「新型コロナウイルスが服に付着していたら嫌だから、買いたくても服を買えない」
などと考えている人もいるようです。
こうした状況によって、アパレル業界は全体的に需要減に苦しんでいます。
店舗販売の売り上げが大幅に減ってしまうと、仮に通販分野での売り上げが伸びたとしても、減少分を取り戻すことは非常に困難です。
売り上げの減少により倒産の危機にあったり、実際に倒産してしまったりしたアパレル企業は数多く存在します。
新型コロナウイルスの影響により経営困難に陥ってしまったアパレル企業は、どのようにコロナ禍に対処すればよいのでしょうか。
たとえば助成金・融資を利用したり、法人破産をしたりする方法が考えられますが、こうした制度の内容についてあまりよくわからないという方も多いかと思います。
そこでこの記事では、新型コロナウイルスにより売り上げが減ったアパレル事業者が利用できる助成金や融資・法人破産をするメリットなどについて、法律の専門的な観点から解説していきます。
目次
新型コロナウイルスの影響はアパレル業界だけにとどまらず、幅広い業界に深刻なダメージを与えています。
国や金融機関は、こうした経済危機に対応するため、新型コロナウイルスの影響で売り上げが大きく減少した事業主に対するさまざまな支援策を打ち出しています。
以下ではその一例を紹介します。
各担当窓口に問い合わせを行いながら、利用可能な制度がないか検討してみましょう。
また、必要に応じて、以下の経済産業省の支援策のまとめページもご参照ください。
日本政策金融公庫は、新型コロナウイルスの影響により経営が悪化した事業主に対して、6000万円の限度で特別融資を行うことを発表しています。
なお、そのうち3000万円分は、当初3年間は実質的に無利子となります。
商工組合中央金庫(通称:商工中金)は、新型コロナウイルスの影響により経営が悪化した事業主に対して、特別の条件を設けて融資を行っています。
商工中金の危機対応融資についても、一定の要件を満たすことを条件として、当初3年間実質無利子で借り入れを行うことができます。
信用保証協会は、中小企業が借り入れを行うことをサポートするため、新型コロナウイルスの影響を受けた事業主についてセーフティネット保証および危機関連保証を適用することを発表しています。
通常の場合、企業は一般枠の限度でしか信用保証協会の保証を受けることができません。
しかし、セーフティネット保証および危機関連保証を利用することにより、さらに別枠で保証を受けることが可能になります。
事業主が労働者の雇用を維持したまま休業をする場合、労働者に対して60%以上の休業手当を支払わなければなりません。
しかし、売り上げがない状況では休業手当を支払うこともままならないでしょう。
その場合、労働者を解雇するしかなくなってしまいます。
このような事態を防ぎ、事業主に労働者の雇用を維持することを促すため、国は雇用調整助成金の制度を設けています。
雇用調整助成金は、事業主が労働者の雇用を維持したまま休業手当などを支払った場合、一定の要件を満たすことを条件として、その金額の一部を国が助成する制度です。
新型コロナウイルスの影響を考慮し、雇用調整助成金による助成の範囲が大幅に拡大されました。
2020年5月上旬時点での助成内容は以下のとおりです(労働者の解雇等を行わない場合)。
<中小企業の場合(労働者の解雇等を行わない場合に限ります。)>
①都道府県知事からの休業等の要請を受けて休業または営業時間の短縮をした場合で、以下の要件のいずれかを満たす場合には、労働者に支給した休業手当相当額を全額助成する
(i)労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていること
(ii) 労働者の休業に対して60%以上の休業手当を支払っており、かつそれが1日当たり8330円以上であること
②都道府県知事からの休業要請を受けていない場合であっても、労働者に支給した休業手当のうち、労働基準法上の義務である60%相当額については9割、それを超える部分については全額を助成する
<大企業の場合(労働者の解雇等を行わない場合に限ります。)>
労働者に支給した休業手当相当額の4分の3を助成する
新型コロナウイルスの影響により売り上げが減少してしまった事業主に対して、売り上げの減少分の一部を補填するため、経済産業省により持続化給付金の制度が発表されています。
持続化給付金は、給付の対象となる法人に対しては最大200万円、個人事業主に対しては最大100万円が給付されます。
持続化給付金の給付を受けるためには、以下の要件をすべて満たすことが必要です。
以上に紹介したように、新型コロナウイルスの影響により経営危機に陥ってしまった事業主の方が利用できる助成金制度や融資などはいくつかあります。
まずは利用できる制度がないか、あらゆる可能性を検討して、事業の継続を目指しましょう。
しかし、固定費が高い場合や、新型コロナウイルスの影響が長期化することが見込まれる場合には、これらの助成金制度や融資によっても経営を維持することが困難という判断になってしまうかもしれません。
その場合には、抜本的に債務の負担を軽減するため、破産を含めた債務整理をすることを検討する必要があるでしょう。
債務整理を行う際には、弁護士に相談して適切に検討することが重要になります。
債務整理の中でも最も強力な手続きが「破産」です。
破産をすると、原則として債務全額について免責を受けることができます。
個人が破産する場合を自己破産というのに対して、法人が破産をする場合を法人破産といいます。
以下で、①法人破産とはどのようなものか、②法人破産をするメリット、の2つについて解説していきます。
法人破産をする場合、破産法に基づく破産手続の中で法人の財産がすべて処分され、債権者に対して分配されます。
そして、最終的には法人は清算手続きにより消滅することになります。
このように、法人破産は債務を消滅させると同時に会社も消滅させる手続きのため、「清算型」の法的整理手続と呼ばれます。
これに対して、法人を存続させつつ債務を圧縮することにより経営の再建を目指す法的整理手続もあります。
これを「再生型」の法的整理手続と言います。
たとえば、民事再生手続や会社更生手続が再生型に該当します。
法人破産は法人がなくなってしまうという大きなデメリットがありますが、借金に苦しむ事業主にとっては多くのメリットもあります。
法人破産にどのようなメリットがあるのかについて解説します。
法人破産をする場合、法人自体がなくなってしまうので、法人の財産を処分した後、債務はすべて免責されることになります。
この債務の全額免責が法人破産最大のメリットとなります。
なお、株式会社や合同会社などの間接有限責任会社であれば、原則としてオーナーである事業主が会社の債務を負担する必要はありません。
ただし、中小企業の場合には、会社の代表者が会社の債務を連帯保証することを求められるケースがあります。
その場合、代表者が会社の債務を履行しなければならないため、代表者自身も会社と連鎖的に破産せざるを得なくなる可能性が高い点に注意が必要です。
破産、民事再生、任意整理などの債務整理を弁護士に依頼した場合、弁護士から債権者宛に受任通知が発送されます。
受任通知には、「債務者について債務整理を受任したため、これ以降債権に関するやりとりはすべて弁護士を通じてお願いします」という趣旨の内容が書かれています。
債権者が弁護士による受任通知を受け取ると、それ以降債務者本人への直接的な取立ては行われなくなります。
そのため、債務者が厳しい取立てに悩まされている場合には、破産などの債務整理を弁護士に依頼することが効果的です。
支払不能や債務超過になってしまった法人を、その状態から立て直すのは容易なことではありません。
むしろ、法人はなくなってしまうとしても、借金をゼロにして、事業を一からやり直す方が良いという場合もあるでしょう。
なお、一度法人破産をしたとしても、その後に新たな法人を起こして代表者に就任することもできます。
やり直しは利くと考えて、法人破産を決断するのもひとつの手段です。
今回は、新型コロナウイルスの影響で経営が困難になってしまったアパレル会社の経営者が取ることのできる対処法について解説してきました。
まずは国の助成金制度や、各金融機関が提供している融資などを利用することを検討してください。
助成金や融資でしのいでいる短期間のうちに売り上げを回復することができれば、事業を立て直すことができるでしょう。
しかし、新型コロナウイルスの影響による不況は長期化が懸念されています。
そうなれば、すぐに以前の売り上げを回復することは難しく、経営破綻に至ってしまう可能性が高いでしょう。
もし借金をどうしても返しきれない、経営を立て直すことが難しいという場合には、弁護士にご相談ください。
弁護士は債務整理に関するノウハウを持っていますので、依頼者の状況に応じた最適な債務整理の方法を提案してくれます。
借金問題は早期解決が一番です。もし借金を長いこと滞納してしまうと、遅延損害金が溜まってどんどん借金が膨れ上がってしまいます。
借金で苦しんでいるという方は、すぐに弁護士にご相談ください。