給与差し押さえが強制執行…借金が会社や家族にバレる?
債務者が借金を返済しなかった場合は給与を差し押さえられることがあります。 給与の差し押さえとは、債権者が債務者の給与…[続きを読む]
サラリーマンの方であれば、所得税や住民税などの税金は給与から天引きされるため、税金の納付について心配しなければならない場面は少ないです。
しかし、自営業の方や、年度の途中で休職・退職(転職)をした場合などは、年度が終わってから、多額の税金をまとめて支払わなければなりません。
その際、前年度よりも収入が減ってしまっていたり、直前に思いがけない出費が発生してしまっていたりすると、税金が払えない事態が発生する可能性があります。
税金は国に対する債務ですので、滞納すると大変なことになってしまいます。できる限り早急に対処することが必要です。
この記事では、税金(所得税・住民税)が払えない場合どうすればよいのかということについて解説します。
目次
実際に税金を滞納してしまった場合に、どのような事態が発生してしまうのかを具体的に見ていきましょう。
所得税や住民税を滞納した場合、納付期限の翌日から延滞税が発生することになります。
つまり、滞納が続けば続くほど、後で支払わなければならない税金の金額はどんどん増えていってしまうのです。
所得税や住民税の滞納状態が続くと、税務署から督促状が送られてきます。
法律の規定上、所得税については納付期限から50日以内に(所得税法37条2項規定)、住民税については納付期限から20日以内に督促状が送られてくることになっています(地方税法329条1項規定)。
税務署から督促を受けてしまった場合、さらに深刻な事態になる前に早めに対処する必要があります。
督促状が発送されてから10日間が経過しても税金が支払われない場合には、税務署は債務者の財産を差し押さえることができるようになります(国税徴収法47条1項1号、地方税法331条1項1号)。
しかし、現実に差し押さえが行われる前に、債務者に対する最後の警告をする意味で、電話や郵便による催告が実務上行われています。
差し押さえが行われてしまうと、債務者の財産は強制的に換価・処分されてしまいますので、最低でもこの催告の段階までに何らかの対応をしておかなければなりません。
督促状の発送やその後の催告を受けてもなお、債務者が税金を支払わなければならない場合は、滞納処分という強制徴収の手続が取られます。
滞納処分においては、債務者の預金や給与債権、住宅や車などの資産が差し押さえられてしまいます。
差し押さえが行われてしまうと、債務者の意図しない形で財産が処分されてしまい、生活に困窮してしまうことになります。
また、滞納処分が行われた場合には、他にも様々な弊害が発生することになります。
たとえば、給料が差し押さえられた場合には、税金を滞納していた事実が職場に発覚してしまいます。
口座が差し押さえられてしまうと、ある日突然、預金の残高が0となってしまうかもしれません。
このように、滞納処分による差し押さえが行われてしまうと大変なことになってしまいますので、早めに対処法を検討しておく必要があります。
税金を滞納すると、納付期限の翌日から延滞税が発生してしまいますので、早急に対処する必要があります。
また、既に滞納をしてしまっているという場合についても、滞納処分による差し押さえという最悪の事態に至る前に、やはり速やかに対処する必要があります。
税金の支払いができない場合には、税務署に相談した上で各種手続きを申請するほかありません。
支払いができなくなりそうということが分かった時点で、まずは税務署に相談しましょう。
税務署で、国や自治体の定める税金の減免制度が利用できないかを確認します。
もし減免の要件に該当しているような場合には、税金の支払い義務自体が一部なくなりますので、債務者の負担は大きく軽減されます。
税金の減免制度を利用できない場合でも、一定の場合には、納税の猶予や換価の猶予を認めてもらうことができます。
災害や病気、廃業や事業上発生した大きな損害などにより、税金を一括で納入することができないと認められる場合に、税金の全部または一部の徴収を猶予してもらえる制度です(国税通則法46条1項、地方税法15条1項)。
納税の猶予は、最大で1年間認められます。
滞納処分による債務者の財産の換価を待ってもらえる制度です(国税徴収法151条1項、地方税法15条の4第1項)。 換価の猶予も、最大で1年間認められます。
なお、換価の猶予が認められるための要件は以下のとおりです。
①債務者が納税について誠実な意思を有すると認められること
②次のいずれかの要件をみたすこと
ア 債務者の財産の換価を直ちにすることにより、債務者の事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあること
イ 債務者の財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る税金及び最近において納付すべきこととなる税金の徴収上有利であること
特に、①の要件との関係では、税務署に相談をする際に、「税金を払うつもりがある」ということを良くアピールしておくことが重要になるでしょう。
納税の猶予も換価の猶予も、税金の金額自体を減らせるわけではありませんが、財務状況を立て直すための時間を確保できる有効な手段といえます。
借金に困っている場合、債務整理により借金の負担を減らすことができる、ということを聞いたことがある方は多いと思います。
「それなら、税金を支払う債務も債務整理によって減らせばいいのでは?」と考えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
債務整理の方法には、大きく分けて①任意整理、②個人再生、③自己破産の3種類があります。
しかし残念ながら、いずれの方法でも、税金を支払う債務を債務整理によって減らすことはできません。
税金の納付は国民の義務であるため、債務整理では減額が認められないのです。
しかし、他の借金があるせいで税金を支払う余力がなくなってしまっているというような場合には、他の借金の方を債務整理することが有効な解決策となります。
その際には、弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士は、債務者が負担している債務にはどのようなものがあるか、それらを債務整理することは可能なのかを的確に分析した上で、債務者にとってより良い解決方法を一緒になって考えてくれます。
税金の支払いや、借金の返済に困っている場合には、ぜひ一度弁護士に相談してみましょう。
これまで、所得税や住民税などの税金を支払えない場合にどうすればよいのかについて解説してきました。
税金が払えなくなりそうだということが分かった場合、まずはできるだけ早く役所の窓口に相談してみましょう。
そこで、自分の状況を訴えた上で、税金を支払う意思があるということをアピールすれば、役所の人も親身になって相談に乗ってくれるでしょう。
また、利用可能な制度(減免や猶予など)についても紹介してくれるはずです。
さらに、税金を支払う債務自体は債務整理によって減額することはできませんが、他の借金を債務整理によって減額することは有効でしょう。
最も良くないのは、税金の滞納をそのまま放置してしまうことです。
税金の滞納を放置してしまうと、延滞税が膨らみますし、最悪の場合差し押さえにより財産が強制的に換価・処分されてしまいます。
国や自治体による滞納処分の手続きはスピーディに行われますので、可能な限り早めの対応を心がける必要があります。
税金の支払いや借金の返済に困っている方は、ぜひ弁護士にご相談ください。