信用保証協会による代位弁済通知・求償権とは?
銀行のカードローンや住宅ローンを利用して「借金」すると、必ず信用保証会社による保証付きで融資が行われます。 そして、…[続きを読む]
持ち家の世帯の多くは、毎月の出費に占める住宅ローン返済の割合が大きくなっていることでしょう。
しかし、最近では、新型コロナウイルスの影響で収入が大幅に減ってしまったという人が少なくありません。
新型コロナウイルスの流行が長引いてしまうと、住宅ローンの支払いにも影響が出てしまう可能性があります。
また、会社員の方の中には、ボーナスを前提にローンを組んでいる方も多いと思います。
その場合、会社の業績低迷によりボーナスがカットされてしまったら、住宅ローンの支払いがかなり厳しくなることが予想されます。
どうしても住宅ローンが払えないという事態になってしまった場合、どうすればよいのでしょうか。
この記事では、住宅ローンの返済負担を「債務整理」により解決する方法について解説します。
目次
まず、毎月支払うべき住宅ローンの支払いを滞納していると、どのような事態が生じてしまうのかということについて解説します。
住宅ローンを期限どおりに支払わない場合、その後支払いが完了するまで毎日遅延損害金が発生していきます。
遅延損害金の割合は契約によって定まりますが、おおむね年率14%程度の割合が定められていることが多いです。
支払いが遅れれば遅れるほど、遅延損害金が膨らんでいってしまうので、早急に対処することが必要です。
一定回数以上住宅ローンの支払いを滞納すると、債権者の請求により、債務者は住宅ローンについて期限の利益を喪失します。
期限の利益とは、「住宅ローンを返済期日まで借りておくことができる」という利益のことを言います。
これを失うということは、すなわち「住宅ローンの全額を直ちに返済しなければならなくなる」ということを意味します。
何回滞納が続けば期限の利益を喪失するかについては契約により定まりますが、だいたい3回(3か月)程度の滞納で期限の利益を喪失することが規定されていることが多いです。
なお、保証会社が住宅ローン債務を保証している場合には、債権者である金融機関は保証会社に保証債務の履行を請求することになります。
この場合、金融機関の持つ住宅ローン債権は、保証債務を履行した保証会社に移ります。
それ以降は、債務者は保証会社に対して債務を負う状態となります(つまり、債務者は保証会社に一括で返済をする必要が出てきます)。
住宅ローンを組む際、購入した自宅の土地と建物には「抵当権」が設定されます。
抵当権とは、住宅ローンの債務が支払われなくなった場合に、目的物である土地と建物を競売により売却して、その代金から住宅ローン債権を回収できるという権利です。
債務者が住宅ローン債務の期限の利益を喪失してもなお、住宅ローン債務が支払われない場合には、債権者によりこの抵当権が実行され、自宅の土地と建物は「競売」により処分されてしまうことになります。
おおよそ住宅ローンの滞納が6か月以上続いた段階で、裁判所から「担保不動産競売開始決定」という書面が郵送されてきます。
その後、裁判所の執行官による現況調査を経て、競売の入札が行われ、最後に落札者に対して自宅の土地と建物が売却されます。
競売が実行されてしまっては、もはや自宅を手元に残しておくことは不可能です。
何とかして自宅を残したいのであれば、早急に対応を考える必要があります。
上記で解説したように、住宅ローンの支払いができない場合、自宅が担保不動産競売にかけられる前に何らかの対応をする必要があります。
住宅ローンの債務負担を軽減するための方法として「債務整理」を行うことが考えられます。
債務整理の概要について詳しく見ていきましょう。
債務整理とは、債権者との私的な交渉、または裁判所を通じた法的な手続により、債務(借金)の減免や支払い猶予などを取り決め、債務の返済負担を軽減する方法を言います。
債務整理には、大きく分けて以下の3つの方法があります。
それぞれの手続について、その特徴と利用すべき場合について簡単に解説します。
任意整理とは、債権者と個別に交渉をすることによって、債務の減免や返済スケジュールの猶予を認めてもらうことを言います。
任意整理の特徴は、裁判所が関与しない手続きであるという点にあります。
そのため、裁判所に提出する書類の準備などは不要です。
また、債権者が合意してくれさえすれば、任意整理後の返済計画を自由に決定することができます。
つまり、任意整理は簡単かつ柔軟な形で行うことができる債務整理の手続であると言えます。
一方で、任意整理はあくまでも、債権者が債務の減免や返済スケジュールの猶予に同意してくれることが前提となる手続きです。
そのため、債権者の同意が得られない場合には、任意整理を行うことはできません。
また、任意整理の場合(過払い金がある場合を除いて)基本的に債務の大幅な減額を得ることはできない点にも注意が必要です。
抵当権を実行して担保不動産競売が行われる場合、売却価格が市場価格よりも低くなってしまう傾向にあります。その場合、債権者は住宅ローン債権の全額を回収することができない可能性があります。
そうなってしまうくらいなら、債務者に返済を続けてもらう方が良い、と債権者が考える場合は、任意整理に応じてくれる可能性があります。
ただし、債務者の収入が不安定で、債権回収の見込みがないと判断する場合には、債権者は任意整理に応じてくれないでしょう。
その場合は、別の方法を検討する必要があります。
もしくは、他の借金も多く嵩んでいる場合、住宅ローン以外の債務を選択して減額し、住宅ローンはこれまで通り払っていくという選択肢もあるでしょう。
個人再生とは、民事再生法に基づき、裁判所における手続きによって、債務の減免や返済スケジュールの猶予を取り決める方法です。
住宅ローン債務がある場合に個人再生手続を行う最大のメリットは、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用して家を手元に残すことができるという点にあります。
住宅資金特別条項を利用することにより、住宅ローン以外の借金を大幅に減額しながら、住宅ローンの返済を継続することができます。
同時に、住宅ローン自体については、返済スケジュールの見直しが行われますので、債務者の返済負担が軽減されることが期待できます。
また、一度住宅ローン債務の期限の利益を喪失してしまった場合(保証会社が代位弁済した場合を含みます)であっても、再生計画が認可されれば、期限の利益の喪失がなかったものとみなされ、引き続き返済を継続していくことが可能です(いわゆる「巻き戻し」)。
個人再生手続においては、原則として債権者の多数決により再生計画が認められるかどうかが決定されます。
しかし、再生計画に住宅資金特別条項を定める場合には、住宅ローン債権者は(自分は返済を受けられる立場のため)再生計画の認可に関する議決権を持ちません(民事再生法201条1項)。
したがって、住宅ローン債権者の債務整理に関する同意は得られないけれど家は手元に残したい、という場合には、個人再生手続きの利用が唯一の道となります。
なお、保証会社が既に住宅ローン債務の代位弁済を行っている場合には、代位弁済から6ヶ月以内に個人再生手続開始の申立てをしなければ、住宅資金特別条項を利用できないという点に注意が必要です(民事再生法198条2項)。
自己破産とは、破産法に基づき、裁判所の下での破産手続において、主に債務の全額免除により債務者を債務の負担から解放する方法です。
自己破産の最大の特徴は、原則として債務の全額が免除されるということにあります。
また、破産手続きを行うに当たっては、債権者の同意は必要ありません。
しかし債務者は、生活に必要となる最低限の現預金などを除いて、すべての財産を処分しなければなりません。
このように、自己破産は債務者を債務の負担から解放するための最後の手段として位置づけられます。
自己破産手続きでは、債務の全額免除と引き換えに、生活に必要となる最低限の現預金などを除くすべての財産が処分されてしまうので、自宅を手元に残すことはできません。
しかし、住宅ローン返済の見通しが立たない状態では、自宅をあきらめ、自己破産を余儀なくされる場合もあります。
住宅ローン返済の見通しが立たないので自宅はあきらめるしかない、という場合には、破産の前に自宅の任意売却を検討してみましょう。
任意売却とは、競売によるのではなく、自ら(または業者に依頼して)買い手を探して相対取引で自宅を売却することを言います。
担保不動産競売が行われる場合、通常売却価格は市場価格を下回り、売却代金を借金の返済に充ててしまうと、債務者にはお金が全く残らないことがほとんどです。
これに対して任意売却の場合は、担保不動産競売の場合よりも高額で自宅を売却することが可能なため、その売却代金で住宅ローンを完済し、なお債務者の手元に現金が残るということもあり得ます。
よって、破産の前に任意売却の可能性を検討することが有効であると言えます。
債務整理や任意売却については、法律の専門家である弁護士が豊富な知識と経験を有しています。
特に、何カ月も住宅ローンを滞納しているようなケースでは、強制執行により自宅を失ってしまう危機が目前に迫っている状態であると言えます。
弁護士は、依頼者の状況を聞いて、どの債務整理の方法を選択すべきかなども含めて、問題解決のためのアドバイスをしてくれます。
一刻も早く危機的状況に対処するために、早めに弁護士に相談するようにしましょう。