会社・法人が倒産したら|破産手続きの概要と流れ
この記事は、資金繰りでお悩みで「会社が倒産したらどうなるかわからない」「会社を畳むにはどうすれば良いのか」とお考えの…[続きを読む]
法人・企業が人を雇った場合、基本的に正社員や一部の従業員を厚生年金保険(いわゆる社会保険)に加入させる義務を負います。
厚生年金保険に加入すると社会保険料を支払う必要が出てきますが、業績不振から社会保険料を払えない企業が増えているようです。
場合によっては社会保険料の支払いが原因で倒産するケースもあり、現在頭を悩ませている法人の事業主・経営者も多いかもしれません。
社会保険料は「労使折半」といって、会社と従業員が半分ずつ支払うものですが、最終的な納付義務を負うのは会社側です。
しかし、会社側が様々な理由で、社会保険料を支払わない事例が散見されます。
この記事では、社会保険料について、
を解説していきます。
目次
まずは、なぜ社会保険料を支払わない企業が増えたのかを考えていきます。
「社会保険料を払わなくてはいけないことを知らなかった」というものです。これは、コンビニなどのアルバイトが多い職場で発生することがあります。
「うちにはバイトしかいないから厚生年金に加入しなくていい。つまり社会保険料がかからない」と勘違いしているオーナーもいるようですが、正社員でなくても「1週間の所定労働時間や1ヶ月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上」である従業員に対しては、たとえバイトやパートタイマーであっても厚生年金保険に加入して、保険料を支払う義務が生じます。
また、脱サラしたばかりで独立した人の中には、会社の人事・労務管理について勉強不足の人がどうしても存在します。
そういった人が会社を作った場合、社会保険に関する知識が身についていないこともあって、社会保険に未加入のまま営業を続け、その結果として社会保険料を支払わないということが起こりえるのです。
なお、「うちは従業員を雇っていないから…」という社長一人の会社でも、例外はあれど、社会保険への加入義務は発生します。
これを知らずに未加入のまま営業を続け、社会保険料を支払っていない会社もあるようです。
事業がうまく行かずに社会保険料を支払えないというケースも存在します。
会社は毎月従業員の手取り給与を振り込まなければなりませんが、この支払いに困って社会保険料に回す分を使ってしまう…という事例もあるようです。
近年は人手不足の影響で倒産が起こるほど、労働力が不足しています。
会社は従業員に辞められては困るため、給与を払い続けなければなりません。
また、平均時給なども上昇傾向にあるので、人手を確保するためにも給与を維持またはアップさせる必要があります。
こういった事情で社会保険料を支払う余裕がない・支払いを後回しにせざるを得ない会社は、一定数存在すると考えられています。
日本年金機構は数年間「消えた年金問題」の対応に追われていました。
しかし、近年は国税庁が持つ源泉徴収の情報を利用することで、どの会社に何人の従業員がいるのかを把握できるようになっています。
また、マイナンバーによって社会保険に未加入の事務所を特定することも可能です。
上記の手段で社会保険に未加入の企業を狙って加入を促すことができるようになった結果、社会保険に加入済みの企業を大幅に増やすことに成功しました。
しかし、社会保険に加入したことと、保険料を支払えるかはまた別の話です。
加入したは良いものの、資金繰りなどの問題で支払う資金がなく、結果的に滞納を続けている会社もあるとされています。
【建設業で受注に影響が出るため保険に加入したが保険料を払えないケースも】
建設業では入札公告を伴う工事において、元請業者が社会保険に未加入の業者と下請契約を結ぶことが禁止されています。現在はまだ一次下請け業者との契約が禁止されているだけの状態ですが、国土交通省の直管工事では二次請け以下の場合でも、社会保険の未加入が発覚すると担当部局に通報されてしまいます。
また、社会保険に未加入の会社は公共工事の入札時に減点されるというデメリットがあります。これに加えて、国土交通省は元請業者に「下請業者が社会保険に加入するよう指導するように」という通達を出しています。
こういった取り組みが功を奏して保険に加入する建設業者は増えたようですが、資金繰りの関係などで滞納してしまう会社もあるそうです。
また、建設業では「一人親方」といって会社に所属せず個人で企業から受注する人もいますが、こういった人が保険料を支払えず滞納するケースもあります。
社会保険料を支払わないと、以下のような不利益が発生します。
いつまでも保険料を滞納していると、最大で年14.6%もの延滞金を課せられてしまいます。
通常の支払いもできないのに、延滞金まで加算されると、ますます経営が苦しくなるでしょう。
また、社会保険に未加入の場合は、強制的に加入させられることもあり、その場合は過去に遡って保険料を請求されます。
厚生年金保険料の場合、時効は2年なので、既に辞めた従業員の分も含めた2年分が一気に請求されるのです。
滞納を続けていると、督促状の送付や、電話による納付督励が行われます。また、年金事務所の職員が直接事業所へ訪問に来ることもあるでしょう。
その後も、指定された期限までに完済しないと、「差押予告通知書」などの書類が届くことがあります。
これは「期間内に社会保険料を支払わないと、あなたの財産を差押えますよ」という警告書です。
行政は民間と違って裁判所での手続を経ることなく差し押さえができるので、通常の借金の滞納時よりも早く財産を差し押さえられる可能性があります。
商売をしている人の場合、差し押さえの対象となることが多いのは「売掛金」や「銀行口座預金」です。
差し押さえをされると、関係者にはその事実がわかってしまいます。
例えば、商売用の銀行口座が差し押さえられると、銀行に差し押さえの事実がわかってしまうので、銀行からの融資などに大きな悪影響が出ます。
また、売掛金を差し押さえられた場合、売掛先に差し押さえの事がバレてしまいます。
そうすると、会社としての信頼を失ってしまい、取引を控えられてしまうかもしれません。
正当な理由なく保険料を納付しない場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金を受けることがあります(健康保険法第208条)。
なお、年金事務所等の調査に協力しない場合や、保険に関する事柄を適切に報告しなかったり手続を怠ったりした場合も、同様の罰則を受けます。
延滞金を含めた社会保険料が一括請求されると、それを支払えずに倒産するケースが見られます。
さらに、差し押さえによる財産の減少、そして銀行や取引先からの信頼失墜などの影響で、既に悪かった資金繰りがますます悪化して、倒産に結びつくことがあります。
どうしても保険料を支払えない場合は、以下の方法で解決を図ってください。
まず行うべきは、行政側(年金事務所)への相談です。
督促状が来たまま無視して放置すると心証が悪くなりますが、一方で、しっかりと事情を話せば分割払いに応じてくれることもあります。
分割払いが認められたら、既に行われた差し押さえを解除してくれる可能性もゼロではありません。
また、「納付の猶予」「換価の猶予」といった制度もあるので、これらを利用できるかどうか調べてみることもお勧めします。
いずれにせよ、年金事務所には「お金がないのですぐには支払えないですが、支払う意志はあります」という姿勢を示すことが大切です。
行政側が相談に応じてくれず、断固として一括請求を譲らなかったり、差し押さえを解除してくれなかったりするケースも考えられます。
(差し押さえに関しては、むしろ解除してくれないケースがほとんどです。)
そういった場合は、借金問題などに詳しい弁護士に相談してください。
個人の自己破産に加えて、法人の破産を行うことを検討してくれます。
個人が自己破産した場合、通常の借金は帳消しになりますが、滞納中の税金などの公租公課は免除されません。
一方、法人が自己破産した場合は、法人格そのものが消滅するため、全ての債務が消滅します。
たとえ法人の代表取締役であっても、法人とは別人格であるため、支払義務を引き継ぐことはありません。
結論として、法人が自己破産すれば社会保険料の滞納も解決します。
【法人を自己破産させると従業員の厚生年金は減るの?】
会社は従業員の給与から保険料を天引きしていますが、これを納めないからといって、従業員の厚生年金受給額が減ることはありません。また、雇用期間中であれば、破産による従業員へのデメリットもありません。
ただし、社会保険の対象から従業員を外してしまっていると、その従業員の受給額は減ってしまいます。従業員に迷惑をかけることになるため、不用意な行為は慎みましょう。
社会保険料については、毎月20日前後に日本年金機構から「社会保険料納入告知書」が送付されます。この告知書をもとに、金融機関などで支払いを行います。
保険料の納付期限は翌月末日となっていますが、もし末日が休日の場合、支払い期限は翌月末日以降の最初の営業日となります。
また、納入告知書に記載された支払い方法以外に、指定した金融機関で口座振替を利用する方法も選択できます。口座振替を選択すれば、社会保険料の忘れが防止できるため、おすすめです。引落しの日は、保険料の納付期限である翌月末日です。
社会保険料は会社と社員が半分ずつ負担する仕組みです。
社会保険料を期日までに支払わないと、督促を受けます。これだけでは実害がありませんが、それでも放置すると、いずれ、財産調査や財産の差し押さえが行われます。この場合、多くの従業員に影響が出てしまいます。
虚偽の申告をしていたり、複数回にわたる加入指導に従わなかったりといった、悪質なケースは、6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金(健康保険法第208条)が科されることがあります。
結論から言えば「必要」です。
一口に破産といっても、様々なケースが考えられます。
早めに相談することで、例えば「社会保険の対象から従業員を自己判断で早期に外してしまい、従業員が将来受け取れる年金額を減らしてしまって迷惑をかける」…というようなことを防げます。
また、うかつに会社の財産を個人名義に書き換えて、税務署などから財産隠しを疑われる…といった事態も予防可能です。
何よりも、慣れた弁護士に法人の自己破産を依頼すれば、面倒な書類集めや裁判所での手続をスムーズに終えてくれます。
結果的に早く悩みから解放されて次のステップに踏み出せるので、弁護士は必要不可欠な存在なのです。
社会保険料の問題以外でも、法人を運営する中では様々なトラブルに見舞われるはずです。
何か困ったことがあれば、弁護士に相談してください。
様々な悩みに対して法律的な観点からベストなアドバイスをしてくれます。
例えば今回の「社会保険料が払えない」という悩みについても、はじめから弁護士がいれば、何らかの対策を教えてくれたかもしれません。
弁護士は相談者の味方です。法人を運営するときも消滅させるときも、弁護士の力を借りて円滑に物事を進めましょう。