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自己破産をするとき、破産者に一定以上の財産がある場合や、浪費・ギャンブルなどの重大な「免責不許可事由」がある場合などには「破産管財人」が選任されます。
破産管財人には裁判所に対し、破産者を免責させてよいかどうかの意見を述べる役割があるので、無事借金をゼロにしてもらうには、破産管財人の存在が非常に重要となります。
そうはいっても一般の方にとって破産管財人はあまりなじみがなく、何をする人なのか、どのように対応したらよいのかわからないケースが多いでしょう。
そこで今回は破産を検討している方に是非とも知っておいていただきたい「破産管財人」にいて、解説をしていきます。
目次
そもそも破産管財人とは何なのでしょうか?
破産管財人は、破産事件に関わって破産者の財産を換価(現金化)して債権者に配当したり、破産者を免責させてよいか裁判所に意見を述べたりする人です。
破産者に一定以上の財産がある場合、限度を超える分はすべて現金に換えて債権者へ公平に配当しなければなりません。そのような職務を実際に行うのが破産管財人です。
また破産者に重大な浪費やギャンブルなどの免責不許可事由がある場合、そのまますんなり免責を認めると問題があります。
そこで、破産管財人に状況をチェックさせて「これなら免責を認めても大丈夫だろう」というケースでのみ裁量免責を認めるとされています。
このように、破産管財人は破産事件において、破産者の財産を預かって管理・処分したり破産者を免責させるかについて重要な意見を述べたりするのですから、非常に重要な役割を果たす人です。
自己破産したとき、すべてのケースで破産管財人が選ばれるわけではありません。破産管財人が選任されるケースとされないケースの違いをみていきましょう。
自己破産の手続きには「同時廃止」と「管財事件」の2種類があります。
同時廃止とは、破産者に換価の対象になるような財産がないので、破産手続き開始決定とともに破産手続きが廃止(終了)するタイプの簡易な破産事件です。
破産管財人は破産者の財産を換価・配当する職務を行う人なので、同時廃止のように換価・配当が不要なケースでは選任されません。
一方、管財事件とは、破産者に一定以上の財産があって、財産の換価や債権者への配当が必要な事件です。ただし、破産者に重大な免責不許可事由がある場合には、破産者に財産がなくても管財事件になります。
管財事件には、原則的な「一般管財」と、手続きを全体的に簡易化した「少額管財」があります。個人が破産する場合はほとんどが少額管財になります。
少額管財でも一般管財でも、どちらも破産者の財産の換価と配当を要するので、破産管財人が選任されます。
また破産者に重大な免責不許可事由がある場合には、破産管財人が本人を観察して本当に免責させてよいか検討しなければならないので、やはり破産管財人が選任されます。
管財事件になるかどうかは、以下の基準で判断されます。
破産者に一定以上の財産があると、換価と配当が必要なので破産管財人が選任されます。基準となる財産額は各地の裁判所にもよりますが、預貯金や保険などの個別の財産で20万円を超える場合、現金なら99万円を超える場合に管財事件とされる例などがあります。
破産者に財産がなくても、浪費やギャンブルなどの重大な免責不許可事由があれば破産管財人による観察が必要なので、管財事件になります。
弁護士や司法書士に依頼せず本人が破産を申し立てていて、資料が不足していて破産に至った経緯などもわかりにくく調査が必要な場合などには、破産管財人が選任されることがあります。
破産管財人が選任されると、以下のような職務と権限を持ちます。
破産手続き開始決定があって破産管財人が決まったら、破産者は速やかに破産管財人に財産を引き渡します。
財産を預かったら破産管財人はそれらを現金化して破産管財人の口座に貯めていきます。
たとえば売掛金を回収したり不動産を売却したり保険を解約したりして、配当原資となるお金を作ります。
すべての換価業務が終了したら裁判所に報告を行い、債権者への配当方法を決定して各債権者へと配当を行う権限を持ちます。
なお、報告漏れの財産がないかなどを調べるため、破産手続き開始決定後は、破産者宛ての郵便がすべて破産管財人の事務所に届くようになります。
その後は定期的に破産管財人の事務所に郵便を受け取りにいきましょう。
管財事件の手続き中は、何度か裁判所で「債権者集会」が開かれます。破産管財人は債権者集会に出席して債権者に対し報告と説明を行います。
破産管財人のもう一つの重要な職務と権限が「破産者の免責についての意見」です。
重大な免責不許可事由のある事件で破産管財人が選任されると、破産管財人は破産者と月に1回程度面談を行い、家計収支表や反省文を提出させたり生活状況を確認したりします。
その結果問題がなければ「免責相当」という意見を出しますし、免責を認めるべきではないと判断されたら「免責不相当」の意見を出されてしまいます。
免責不相当と意見されたら本当に免責を受けられなくなる可能性が高まるので、破産者にとって破産管財人の心証をよくすることは非常に重要です。
破産管財人との面談では、どのようなことを聞かれるのでしょうか?準備事項も含めてご説明します。
一般的な事案では特に問い詰められるようなことはなく、これまでの経緯や借金額、返済可能性や財産状況などについて、淡々と聞かれるだけです。
資料を見たけれどわかりにくかった部分などを聞かれるケースもあります。
聞かれた内容に対し誠実に、正直に答えていけば、特に問題なく終わります。時間は20~30分程度であるケースが多数です。
免責不許可事由がある場合には、淡々とはいきません。月に1回程度管財人の事務所に呼び出されて反省状況や現在の生活状況などについて聞かれます。反省文を提出させられることも多々あります。ある程度時間もかかり、厳しいことをいわれるのもやむを得ないと考えましょう。
準備事項としては、以下のようなことを行いましょう。
自分一人で判断しにくい場合、申立代理人の弁護士に相談したら、個別の状況に応じてアドバイスをもらえます。
破産管財人が選任されると、高額な費用がかかることに注意が必要です。
通常一般の費用に足して「管財人の予納金」が必要になるからです。管財人の予納金の金額は、ケースによって異なります。
通常の少額管財事件で弁護士に申し立てを依頼した場合、20万円程度ですむケースが多数です。
弁護士に依頼しなかった場合(本人申し立てや司法書士申し立て)、少額管財でも50万円くらいかかる可能性があります。
また一般管財事件になると管財予納金が最低50万円程度はかかりますし、100万円以上になることも珍しくありません。ただ一般の個人の自己破産のケースでは、ほとんどが少額管財になるので、こちらについては心配しなくてよいでしょう。
弁護士に依頼しないと管財予納金が20万円から一気に50万円に跳ね上がってしまう可能性があるので、管財事件になりそうであれば、弁護士に依頼するのが賢い選択と言えます。
管財予納金の金額や支払い方法については各地の裁判所によって異なるので、具体的には現地の弁護士に相談して確認すると確実です。
破産管財人というと、「怒られるのかもしれない」「免責不許可の意見を出されたらどうしよう?」などと不安になる方も多いのですが、実際にはそういったケースは少数です。多くの方は普通に手続きを進めていけば免責を受けられるので安心しましょう。
手続き進行や費用の点で不安があれば、自己破産を依頼している弁護士に遠慮なく質問をしてアドバイスを受けましょう。