個人再生の最低弁済額|いくら減額されるのか?
個人再生をすると、借金を大幅に減額してもらうことができます。 その減額率は最大で90%ほどに及びます。これはつまり、…[続きを読む]
個人再生とは、裁判所を通して借金等の債務を大きく減額したうえで、残債務を3年~5年かけて分割払いすることを可能にする手続です。
今抱えている債務の返済が困難になった方の中には、個人再生を利用しようかとお悩みの方がいると思います。
実は、個人再生の手続きには「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」と呼ばれるものがあります。いざ自分が個人再生を利用しようと考えた場合、どちらの手続きを選択するべきなのか迷う方も多いかもしれません。
実際には、債務者それぞれの様々な要素を加味して弁護士がどちらの手続きにするべきかを検討をしてくれますが、ここでは、小規模個人再生と給与所得等再生の違いについて説明します。
個人再生手続きを利用する場合、基本的には小規模個人再生を利用することになります。そのため、まずは小規模個人再生の基本事項について説明します。
小規模個人再生は、主に個人事業主を対象とした手続きですが、会社員や公務員などでも利用することができます。
また、小規模個人再生の利用には債権者の同意(債権者の頭数の半数以上の同意、又は債権総額の過半数を有する債権者の同意)が必要です。
個人再生は、返済すべき最低金額が負債総額に対する割合で決められています(給与所得者等再生も含む)。
負債総額 | 最低返済額 |
---|---|
100万円未満 | 負債総額すべて |
100万円超500万円以下 | 100万円 |
500万円超1,500万円以下 | 負債総額の5分の1 |
1,500万円超3,000万円以下 | 300万円 |
3,000万円超5,000万円以下 | 負債総額の10分の1 |
なお、上記の負債総額は、住宅ローンを除きます。
100万円未満の場合は負債総額の全額を返済する必要がありますが、3,000万円を超えると負債総額の10分の1が最低返済額となります。
つまり、住宅ローンを除いた債務額が3,000万円なら、最低返済額は300万円となるのです(この最低返済額のことを「最低弁済基準額」といいます)。
しかし、常に最低弁済基準額が個人再生後に返済すべき額になるわけではありません。
どういうことかというと小規模個人再生では、「最低弁済基準額」と「清算価値」を比べて、高い方が返済すべき金額となるのです。
清算価値とは、仮に自己破産した場合に債権者に配当される額のことを指します。
例えば住宅ローン以外の負債総額が3,000万円なら、最低弁済基準額は300万円となりますが、清算価値(自己破産をした際に処分される車や預貯金・現金などの手持ちの資産の合計)が500万円であれば、弁済すべき額は500万円となります。
給与所得者等再生は、会社員など将来の収入が一定以上ある債務者が利用できる手続きです。
小規模個人再生と異なり、再生計画に対して債権者からの反対等を受けても、再生計画に対する認可を得ることができます。
給与所得者等再生では、可処分所得額の2年分・最低弁済基準額・清算価値を比較して、一番高い金額を返済金額としなければなりません。
なお、可処分所得額の2年分が最も高い金額となる事が多いとされます。よって、給与所得者再生は、小規模個人再生よりも返済額が高くなりがちです。
可処分所得は、次の式で求めます。
可処分所得 = 収入 -(社会保険料+所得税・住民税などの公租公課)- 最低生活費
つまり、「可処分」とは、毎月の給与のうち、税金や生活費を差し引いた、給与所得者が自由に使用できる所得のことです。
尚、以下のことが過去7年以内にある場合は、給与所得者再生が利用できません。
小規模個人再生と給与所得者等再生は、両方とも「継続的に反復して収入を得る見込み」があることが要件となります。
しかし、給与所得者等再生は、加えて「給与など定期的収入で、変動幅が小さい」ことも要件となります。
また、弁済すべき額も、給与所得者等再生の場合は「可処分所得の2年分の合計額以上」という点が加えられています。
また、先述のように、小規模個人再生、給与所得者等再生を問わず、再生手続きでは「再生計画案」を作成しますが、この計画案に対して、小規模個人再生の場合の債権者は反対する機会を得ることができます。
小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | |
---|---|---|
共通要件 | 継続的に反復して収入を得る見込みがあること | 継続的に反復して定期的な収入を得る見込みがあること・収入の変動幅が少ないこと |
弁済金額 | 最低弁済基準額と清算価値を比べて高い額 | 最低弁済基準額・清算価値・可処分所得の2年分の中で最も高い額 |
議決要件 | 債権者総数の半数以上かつ債権額が総額の2分の1以上の債権者から反対されないこと | 債権者からの異議があっても、裁判所が許可すれば手続可能 |
このように、小規模個人再生では債権者に一定の同意(債権者数の過半数・債権額で1/2以上の消極的同意)を得る必要があるものの、給与所得者等再生より弁済すべき額が少なくなりますので、基本的には小規模個人再生を優先的に検討することになります。
他方、債権者の反対が多く小規模個人再生が利用できない場合には、給与所得者等再生を申し立てることになります。
なお、具体的な個人再生手続きの流れについては以下のコラムをご覧ください。