「官報公告」とは?自己破産や個人再生が家族・職場にばれる危険性

「借金返済がきついので個人再生や自己破産をしたい……」
しかし、そうなると「官報公告が心配」という方がいらっしゃいます。
2019年当初に、破産者の官報情報を集めた「破産者マップ」というサイトが作られた件などもあって、官報公告される影響を懸念する方は以前より増えていることでしょう。
実際、個人再生や破産をしたときの「官報公告」はどのような影響を及ぼすものでしょうか?これによって家族や勤務先に自己破産や個人再生がバレる可能性があるのでしょうか?
今回は、個人再生や自己破産をしたときの「官報公告」で掲載される内容や掲載のタイミング掲載期間、周囲にバレる可能性など気になることをまとめて解説します。
目次
1.官報公告とは
自己破産や個人再生で「官報」に情報が掲載される
自己破産や個人再生をするとき「できれば周囲に知られたくない」と考える方が多いでしょう。
たとえば、家族や勤務先、趣味友達や同窓生などに知られたら、肩身が狭くなってしまいます。
そんなときに心配なのが「官報」です。
官報とは、政府が休日をのぞいて毎日発行している新聞のような機関誌です。
個人再生や自己破産をすると、その官報に氏名や住所、個人再生や自己破産をした事実が掲載されてしまいます。そのことを「官報公告」と言います。
(任意整理の場合は掲載されません。)
官報公告の目的は、「債権者に個人再生や自己破産を知らせること」です。
個人再生や自己破産では、すべての債権者を対象にしなければなりませんが、債務者が把握していなくて漏れている人がいるかも知れません。
そこで、官報公告により、全員に広く知らせるというのが目的となっています。
2.官報公告で掲載される情報
では、実際に自己破産や個人再生で官報公告されたら、どのような情報が掲載されるのでしょうか?
自己破産と個人再生のケースで異なるので、それぞれご紹介します。
2-1.自己破産の場合
自己破産の場合には、以下のような情報が掲載されます。
- 破産者の氏名
- 破産者の住所
- 事件名
- 決定の内容
- 債権者集会の日時や場所
- 破産管財人の連絡先
- 裁判所名
2-2.個人再生の場合
個人再生の場合には、以下のような内容です。
- 再生債務者の氏名
- 再生債務者の住所
- 事件名
- 決定の内容
- 再生債権の届出期間
- 一般異議申述期間
どちらも、借金の理由などは掲載されません。
債務者にとって重要なのは「氏名や住所」などの個人情報と、「事件名(破産や個人再生)」が公開されることです。
これを誰かに見られたら、債務整理をしたことがバレてしまいます。
3.官報公告にはいつ載るか
官報公告は、いつ、どのタイミングで行われるのでしょうか?
これについても自己破産と個人再生のケースで異なるので、それぞれ説明します。
3-1.自己破産の場合
自己破産の場合には、以下の2回です。
破産手続き開始決定が出たとき
自己破産を申し立て、特に問題がなければ裁判所で「破産手続き開始決定」がおります。その段階で一度官報公告されます。
免責決定が下りたとき
個人が自己破産するときには、最終的に免責決定が下されます。その際にも一度官報公告されます。
自己破産では「最初と最後の2回」のタイミングで官報公告されます。
上記の決定が下りてからだいたい2週間程度経過した後の官報に情報が掲載されます。
3-2.個人再生の場合
個人再生の場合には、以下の3回です。
個人再生手続き開始決定が下りたとき
個人再生を申し立てたとき、特に問題がなかったら「個人再生手続き開始決定」がおります。そのタイミングで一度官報公告されます。
書面決議に付する決定が下りたとき
個人再生の手続きが進み、債務者が再生計画案を提出すると裁判所が「書面決議に付する決定」をします。これによって債権者に意見を聞くのです。その際に2回目の官報公告が行われます。
再生計画案の認可決定が下りたとき
個人再生では、最終的に再生計画案の認可が下りることによって手続きが完了します。認可決定時に3回目の官報公告が行われます。
上記の決定があってから2週間程度経過した後の官報に情報が掲載されます。
このように、個人再生では、手続きの最初と中盤、終了時の3回にわたって官報公告が行われます。
4.官報公告はいつまでされるか
いったん官報に情報が掲載されると、どのくらいの期間掲載され続けるのでしょうか?
官報は基本的に「紙の情報」であり「データ」ではありません。また一般に市販されていて、一括で消去したり回収したりする制度もありません。
いったん発行されたら、誰かに保存されている限り、その履歴は永遠に掲載され続けます。新聞と同じで、何年で消える、という概念はないのです。
官報の場合は国会図書館に保存されているので、一気に消失するか何らかの事情で一括で破棄されない限り、延々と残ってしまいます。
また、個人のコレクターなどが持っている場合も、その人が亡くなったり捨てたりしない限り情報が残ります。
実際にあなたの知り合いが見る可能性があるかどうかとは別問題ですが、情報が「残る可能性」だけみると、官報情報を完全に消すのは極めて困難です。
5.官報公告されるデメリット
実際に官報公告されると、どういったデメリットがあるのでしょうか?
5-1.誰かに知られる可能性
官報は、誰でも閲覧できるものです。紙の誌面を誰でも購読できますし実際に購読している個人や団体もあります。
役所などでも定期購読しているケースが多いですし、官報の販売所もあります。
また「インターネット官報」というサイトがあり、ここではバックナンバーを含めて閲覧が可能ですし、購読もできます。
理屈上、官報は「誰でも読める環境」にあるので、誰に自己破産や個人再生を知られてもおかしくない状態になるのです。
5-2.闇金からDMが来る可能性
官報公告には、もう1つ隠れたデメリットがあります。
それは、闇金を始めとした悪質業者が官報の破産者や再生債務者の履歴を調べ、チェックしていることです。
これらの業者は、破産や個人再生が落ち着いて、本人らが「お金が足りない……」などと考え始めた時期を見計らって、住所宛にDMを送ってきます。
闇金の勧誘もあれば、架空の代金請求のハガキや郵便が来ることもあります。
このように、住所や氏名が出回ることにより、闇金や悪質業者の標的にされやすいことが問題です。
5-3.いたずら、嫌がらせに利用される危険性
2019年始め頃、ネット上に「破産者マップ」という悪質なサイトができて騒ぎになりました。ここでは官報に掲載された情報をもとに、日本地図上において破産者の住所にポイントを立てて一覧でわかるように表示されていました。
【話題】破産者の住所や氏名を表示する「破産者マップ」が物議https://t.co/WCeWvFd3dS
官報で公示された破産者の情報をもとにしているというが、知られたくない情報が可視化されていることに批判の声も上がっている。 pic.twitter.com/JFgwm014pU
— ライブドアニュース (@livedoornews) March 18, 2019
このことで、破産者たちが「家族に知られていないのに、マップを見られたら不審に思われてしまう…」と不安を感じて大騒ぎになりました。
サイト自体は問題になってすぐに閉じられたのですが、官報公告される以上、いつ何時こうした嫌がらせやいたずらに利用されるかわからないのは大きなデメリットと言えます。
6.官報公告で周囲にバレる?
それでは、官報公告されると家族や職場、友人知人などに自己破産や個人再生を知られてしまうものなのでしょうか?
6-1.通常は知られるおそれがない
これについては、「通常は心配ない」のが回答です。
確かに官報はネットでも閲覧できるくらいですから、誰でも読めるものです。
ただ「実名検索」をしても官報情報は引っかかりません。実際に官報のサイトを訪ねて官報のバックナンバーを呼び出し、該当のページを開いて破産者や個人再生のリストを順番に見ていかないと見つかりません。
自己破産や個人再生の公告は、官報の中でも後の方に小さい文字でまとめて掲載されているので、探すのも簡単ではありません。いちいち官報のすべての破産者、再生債務者情報を見ようという人は極めて少数です。
あなたの周りの方が「官報マニア」でもない限り、そのような手間をかけて調べるものでもないので、通常は知られることがないでしょう。
6-2.公務員の場合
公務員の方は、役所に官報が置いてあったりして不安に感じることもあるかも知れません。
ただ、あなた自身のことを考えてみてもわかるでしょうけれど、公務員であっても官報を読んでいる人はほとんどいません。
官報の販売所があってもわざわざ購入する人は少ないですし、買っても個人再生や自己破産情報をチェックしようとは思わないでしょう。
公務員だから官報公告で破産や個人再生がバレるというわけではありません。
6-3.官報公告で知られる職業
官報公告によって周囲に知られる可能性のある職業は、以下の通りです。
不動産屋
破産管財案件をターゲットに営業している不動産屋は、官報の破産者情報をチェックして管財人に「売れる不動産はないですか?」と連絡しています。
身近にこれらの仕事に関わる人がいたら、バレる可能性があります。
リサイクルショップ
同様に、破産管財案件を狙って不用品のリサイクルを行う業者があります。こうした業者も官報の破産者情報を見て管財人に連絡を入れるので、破産者情報を見られます。
不用品処理業
不用品の後片付けなどを行う業者も同様に、破産管財案件から仕事をとろうとしています。身近にそういった人がいたら破産情報を知られる可能性があります。
信用情報機関の関係者
信用情報機関の中には官報情報を確認して個人信用情報に登録している機関があります。
そういった信用情報機関の担当者が周囲にいると、破産や個人再生を知られる可能性があります。
身近に上記のような人がいなければ、官報によって破産や個人再生を知られることを心配する必要はまずないと言えるでしょう。
官報公告は確かに心配ですが、それを理由に借金問題を放置していると、生活が立ちゆかなくなったり給料を差し押さえられたりして、結局は会社や家族にバレてしまいます。
そのようなことになったら本末転倒ですので、不安を解消するためにも、一度弁護士に相談してみましょう。