債務の強制執行とは?予兆・流れ・今後の生活について
住宅ローンやクレジットカードの借金、家賃や携帯料金の滞納など、払うべきものを払わないでいると、裁判所によって「強制執…[続きを読む]
債務者が借金を返済しなかった場合は給与を差し押さえられることがあります。
給与の差し押さえとは、債権者が債務者の給与から強制的に一定額を徴収し、債務の弁済に充てる合法的な債権回収の一手段です。
毎月の給与だけでなく、ボーナスや退職金も差し押さえの対象になります。
また、借金だけでなく、税金や住宅ローンを滞納しても給与を差し押さえられる場合があります。
給与の差し押さえは裁判所を通じて行う手続きなので、裁判所から勤務先の会社(第三債務者)に連絡が入ります。このため、少なくとも勤務先には確実に借金の存在がバレてしまいます。
家族や職場に借金がバレたくない、と思う多重債務者の方は多いです。
では、借金がバレないために給与差し押さえを回避するには何をすればいいのでしょうか?
今回は、給与差し押さえが強制執行されそうな場合の正しい対処方法を解説します。
目次
給与を差し押さえられる場合でも、その全額について差し押さえられるわけではありません。
強制執行といっても、給与の全てが差し押さえられると生活が出来なくなってしまいます。
そこで、基準として、期間ごとに支払われる給与(税金等の控除後の給与)の4分の1(25%)の部分のみに差し押さえが出来ることになっており、残りの4分の3(75%)については、債務者・家族の生活のために差し押さえが出来ないことになっているのです。
しかし、給与の額は人によって差があるので、高額所得者の場合には差し押さえられても生活上大きな問題がない一方、低所得者の場合には差し押さえにより最低限の生活が脅かされるほどの残額になったりすることがあります。
また、債務者が高額所得者であれば、まだ回収にまわせる余裕があるのではないかと、債権者も納得がいかないでしょう。
このような矛盾を調整するために、標準的世帯の必要生計費を考慮した差押禁止の上限額を定めています(民事執行法施行令2条)。これを超過する部分は、25%を超えることがあっても差し押さえが出来ることになります。
つまり、差し押さえ禁止範囲の75%に相当する額が下記の「 政令で定められている基準 」の額を超える場合、超えた部分(月給の場合33万円)は全額差し押さえが可能となるのです。
支払が毎月 | 33万円 |
---|---|
支払が半月ごと | 16.5万円 |
支払が10日ごと | 11万円 |
支払が月の整数倍の期間ごと | 33万円×整数倍 |
支払が毎日 | 1.1万円 |
支払がその他の期間 | 1.1万円×期間の日数 |
賞与・その性質を有する給与 | 33万円 |
月額の給料の75%が33万円となるには、44万円(11万円+33万円)以上なければならないことになります。
月額の税金等の控除後の給料が44万円であれば、33万円を超える額については、全額差し押さえが可能ということです。
月額の給与の75%が33万円となるには、44万円(11万円+33万円)以上なければならないことになります。
月額の税金等の控除後の給与が44万円であれば、33万円を超える額については、全額差し押さえが可能ということです。
給与の差し押さえは、直接的に収入が減ってしまうため、債務者にとっては大きな痛手となります。
では次に、督促から給与差し押さえまでの過程を詳しく見てみましょう。
まず、1~2ヶ月程度返済を滞らせると、消費者金融側から連絡が来るようになります。連絡手段は、郵便だったり電話だったりと様々です。
郵便物や自宅への電話で、家族などの同居人に借金がバレるケースも多く見られます。
【借金を滞納すると勤務先に電話が来る?】
消費者金融、いわゆるサラ金に借金を返さないと、勤務先に連絡が入るのではないかと心配する人もいます。
しかし、消費者金融側も、いきなり勤務先に連絡をするわけではありません。
消費者金融が何度連絡をしても、債務者が電話に出なかったり、着信拒否にしたり、居留守を決め込んだりすると、消費者金融側は仕方なく連帯保証人や勤務先に連絡を取ります。
消費者金融が勤務先へ連絡することを避けるためには、消費者金融からの連絡を無視しないことが一番です。
度重なる督促を無視していると、消費者金融が内容証明を送ってきます。
内容証明自体は給与差し押さえとは関係ありませんが、「そろそろ返済しないと、給与差し押さえの準備に入りますよ」というメッセージだと思ってください。
内容証明も無視して滞納を続けている場合は、「仮執行宣言付き支払督促」という書類が届きます。
この書類は、今までと違って裁判所から送られてきます。裁判所が債権者からの申し立てを受けて、債務者に債務の返済を命令しているのです。
債権者が本格的な法的措置を取った証拠と言えます。
また、債権者によっては「貸金返還訴訟」の手続きに入ることがあります。この訴訟によって、債権者は「債務名義」を獲得します。
「債務名義」を得ることで、債権者は強制執行を行うことができるようになり、給与の差し押さえが可能になるのです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
債権者が給与の差し押さえを裁判所に申し立てると、裁判所は債務者の勤務先(第三債務者)へ「差押命令正本」の通知を送付します。
これにより差し押さえが実行され、債務者の勤務先は債務者への給与を債権者に払うか、または法務局へ供託するなどの義務が発生するのです。
どんなに隠していても、この段階で必ず勤務先に借金の存在がバレてしまいます。
【給与を差し押さえられるとクビになる?】
給与を差し押さえされたからと言って、それだけを理由に解雇されることはありません。下手に解雇すると勤務先の方が法令違反に問われる可能性すらあります。
しかし、解雇通知こそされないものの、自主的に退職を勧められる場合は少なからずありますので、十分ご注意ください。
給与が実際に差し押さえされた場合は、解除手続きが必要になります。給与差し押さえ解除に関しては、下記記事で詳しく解説しています。
個人様・法人様を問わず、相当件数の借金問題を解決してまいりました。
個人様・法人様を問わず、相当件数の借金問題を解決してまいりました。
給与差し押さえは、当然借金を返せば回避できます。
しかし、そもそも返済が可能なら苦労はないでしょう。
給与差し押さえを回避するには、借金を払えないと思った時点からできる限り早く対処することが大切です。どうしても給与差し押さえを免れたいのであれば、債権者に何とか頼み込んで返済の猶予をもらうしかありません。
事情を話して滞納分を一部のみでも返済したり、返済計画通りの支払いを約束したりするなどの誠意を見せれば、相手方が多少の猶予をくれる可能性もあります。
将来的に借金を完済できる可能性が薄い場合は、早めに弁護士や司法書士に「債務整理をしたい」と相談してください。
給与を差し押さえられる前に債務整理を行えば、会社に借金がバレずに済みます。
債務整理とは、債務の支払いを待ってもらったり、債務を減額・免除してもらったりする手続きのことです。
自己破産、個人再生、任意整理といった方法で、債務者の負担を減らすことができます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
最後に、給与差し押さえまでの過程で借金の存在が周囲に疑われてしまうきっかけと、それを回避するために弁護士に相談するメリットを説明します。
借金の存在を家族や職場に知られたくない場合、細心の注意を払う必要があります。
多くの場合、借金はちょっとした不注意がきっかけでバレてしまいます。
家族や同居人がいると、自宅に届いた郵便物がきっかけで借金を疑われることが多いようです。
消費者金融や裁判所からの郵便物はそれとわかる封筒で届きますし、同居人が対応して内容証明郵便を受け取ると、郵便物の存在が確実に知られてしまいます。
郵便物により借金がバレることを防ぐためには、弁護士に借金の解決を依頼し、最低限、弁護士事務所には家族に秘密の旨を伝えておきましょう。
消費者金融や法律事務所、または裁判所からの電話を家人が受け取ったことがきっかけで、借金を知られてしまうこともあります。
この場合は、固定電話を利用せず、消費者金融に登録する連絡先を全て自分の携帯にしておくと良いでしょう。
これはある意味事故とも言えるのですが、偶然他人裁判所・法律事務所に出入りするところを目撃されたことがきっかけでトラブルを疑われ、借金の存在まで知られてしまう人もいます。
同居人や勤務先の人に直接見られなくても、たまたま目撃した人の知人同士のネットワークを介して伝わる場合があるので油断できません。
偶然の目撃を防ぐには、弁護士と会う回数を極力減らし、裁判所には弁護士に代理人として赴いてもらうしかありません。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
給与の差し押さえをされたら、少なくとも会社には借金の存在がバレてしまいます。社会的な信用は失われ、最悪失職するケースもあるのです。
差し押さえを回避するために、あらゆる手段を尽くしてください。
そして、差し押さえを回避し、家族にも内緒で借金も解決するためには、弁護士への相談が最良の道と言えます。