個人再生にかかる期間はどのくらい?

債務整理の中でも、個人再生は借金の額を5分の1程度に圧縮でき、ローン返済中の住宅を手放さなくていいなど、債務者にとって非常にメリットの多い債務整理です。
しかしその一方で、手続きが複雑なので一般人が自力でするのがほぼ不可能という側面もあります。「手続きが複雑ということは、時間がかかるのでは?」と考える人もいるかもしれません。
そこでこの記事では、個人再生にはどのくらいの期間が必要なのかをご紹介していきます。トータルの期間に加えて、各ステップごとの期間も記載していくので、あわせてお読みいただければと思います。
なお、実際にかかる期間は案件ごとに異なることが多いので、あくまで一般的な例ということを念頭に置いてください。
目次
1.個人再生の流れ
個人再生は通常、以下のようなステップを踏んで進んでいきます。
- 弁護士への相談と依頼
- 債権者へ受任通知を発送
- 裁判所へ申し立て
- 個人再生委員の選出
- 手続きの開始決定
- 債権の届け出
- 再生計画案の提出
- 再生計画案の認可
- 再生計画に従って支払い開始
各ステップでどのようなことが行われ、どのくらいの期間が必要なのかを以下の項目で説明していきます。
1-1.弁護士への相談と依頼
弁護士に個人再生のことを相談し、依頼をしに行く個人再生の最初のステップです。
このときに個人再生に必要な情報などを集めるように言われるほか、必要な指示をもらうことがあります。
1-2.債権者へ受任通知を発送
依頼を受けた弁護士が各債権者に受任通知を発します。これによって弁護士が債権者との窓口になるので、債権者は債務者に連絡できなくなります。
受任通知は弁護士に依頼した即日ないし翌日から、遅くても2~3日中には発送されることが多いです。
1-3.裁判所へ申し立て
弁護士との打ち合わせを経て、裁判所に個人再生を申し立てます。
債務者の状況が複雑な場合や必要な書類の収集に手間取ることがあるので、長いときには3ヶ月程度かかるかもしれませんが、多くのケースでは依頼から数週間以内に個人再生の申し立てを行える段取りが整います。
なお、申し立てに必要な書類は弁護士が作成してくれるので心配ありません。
1-4.個人再生委員の選出
裁判所によって異なりますが、申し立てを受けた裁判所が「個人再生委員」を選任することがあります。
「個人再生委員」とは、債務者側が提出した再生計画を認可するかどうかになどについて裁判官に意見を言うなどの役割を担う人です。
申し立てから1~2周間程度で面談の呼び出しがあるので、債務者は個人再生委員と面談をする必要があります。
1-5.手続きの開始決定
個人再生委員との面談に問題がなく、他の部分に特に問題もなければ個人再生手続きの開始決定がなされます。
スムーズに行けば弁護士に相談してから1ヶ月程度でこのステップまで進むことができます。
1-6.債権の届出
個人再生にあたっては債権額を確定させなければいけません。債権額を確定させるために、裁判所は申し立て時に提出した債権者のリストを見て各債権者に対して債権額の調査を行います。
債権者が「債権の額が違う」などの異議を述べることもありますし、調査の結果債務者側が算出した債権額とズレが出てくる可能性もあります。もしズレがあった場合は債務者の弁護士が異議を申し立てるので、このステップに必要な期間は流動的です。
1-7.再生計画案の提出
再生計画とは、簡単に言えば「法律に基づいて作成された具体的な返済計画」のことです。この再生計画を裁判所から認めてもらうことが個人再生の最初のゴールとなります。
債権額が確定したら、個人再生手続きの開始の決定から3ヶ月くらいまでに再生計画案を裁判所に提出します。裁判所は再生計画案の内容を確認し、問題がないと判断したら債権者に意見を聞くためにコピーを送付します。債権者には約1ヶ月程度の期間が与えられるので、異議がある場合はこの期間内に行うことになります。
1-8.再生計画案の認可
債権者に異議がなければ再生計画案が認可され、その1ヶ月ほど後に再生計画が確定されます。
1-9.再生計画に従って支払い開始
再生計画にある予定通りに支払いを始めます。再生計画を認めてもらうことが個人再生の最初のゴールと述べましたが、本当のゴールは再生計画通りに返済を続けて借金を完済することです。完済までには3~5年程度かかります。
1-10.再生計画認可までで半年程度かかる
ここまで出てきた期間を合算すると以下のようになります。
個人再生手続きの開始決定 | 弁護士に相談してから1ヶ月程度 |
---|---|
再生計画の提出 | 3ヶ月程度 |
債権者の意見聴取 | 1ヶ月程度 |
再生計画の認可から確定まで | 1ヶ月程度 |
個人再生には大体半年程度の期間が必要ということになります。もちろん案件の難易度によっては4ヶ月になることもありますし、半年を超えることもあります。あくまでモデルケースとして考えていただければと思います。
2.個人再生による制限期間
個人再生をするとその情報が各貸金業者や金融機関の間で共有され、裁判所が個人再生手続きの開始を決定してから5~10年程度は「返済能力に問題がある人」という扱いになります。いわゆる「ブラックリストに載った」という状態です。
この期間中はお金に関する様々な不利益を受けてしまうので心しておかなければなりません。
2-1.制限されることはなに?
「返済能力に問題がある人」として扱われるので、借金やローンができなくなります。貸し手側が債権を回収できなくなるリスクを恐れるからです。
また、クレジットカードの契約や利用も不可となりますが、これはデビットカードや家族カードを使うことである程度解消できます。
その他、ローンなどの保証人になることができなくなったり、携帯電話やスマートフォンの端末代金を分割払いで買おうとすると断られたりします。
2-2.制限期間内に気を付けるべきことはある?
まず借金ができなくなるので、借金が必要となるような状態にならないように気をつけてください。
また、個人再生をするとその事実が「官報」という国の広告文書のようなものに掲載されます。官報をチェックする一般人はあまりいないので官報を通じて知り合いにバレる心配はほぼありませんが、ヤミ金業者などが個人再生をした人や自己破産をした人を官報で確認し、カモにしようと声をかけてくるかもしれません。「当社ならお金を貸せます」などという怪しい誘いには耳を貸さないようにしましょう。
まとめ
個人再生にかかる期間は様々ですが、目安として半年が必要と考えておくといいでしょう。
借金の状況などによって期間は変動するので、詳しくは個人再生の実績がある弁護士に相談して聞いてみるのがおすすめです。個々のケースに即した判断をしてくれるので、より詳しく期間を見積もってもらえます。