自己破産をしても税金は免除されない!

借金が返済できず、自己破産を選択する人がいます。自己破産をして借金の免責が認められ、「これで借金がなくなった」と解放的な感情を抱く人もいるかもしれません。
しかし、実は、自己破産をしても絶対に支払わなければいけないものが残っています。それは「税金」です。
自己破産しても、税金の支払いを逃れることはできません。
この記事では、自己破産した人や自己破産を検討している人に向けて、自己破産後の税金について解説していきます。
なお、滞納税の計算方法、税金の滞納をするとどうなるかなどについては、以下のサイトでも詳しく説明しています。
目次
1.税金が免責されない理由
自己破産をする人は、税金を滞納しているケースが多く見られます。借金により普段の生活もままならないのに、税金だけはしっかりと支払えるという方は少ないでしょう。
しかし、いくら税金を滞納しても、前述のように税金は自己破産の免責の対象になりません。自己破産をしても税金を支払う義務は残ります。
税金のように、自己破産しても免責されない債権のことを「非免責債権」といいます。
では、人生をやり直すために自己破産をしたのに、なぜ税金の支払いは残るのでしょうか?
1-1.税金は「財団債権」
「財団債権」とは、破産者が破産手続開始の決定時に保有する財産からいつでも弁済を受けられる債権のことです。言い換えれば「自己破産の対象にならない債権」です。
税金は、この財団債権に当てはまります。よって、自己破産の手続きをしているときであっても、財団債権である税金は支払わなければならないことになっています。
また、税金は破産法で「優先的破産債権」とされており、他の破産債権よりも優先して弁済を受けることができます。
これらの理由から、税金は自己破産した後でも支払義務が継続します。また、過去の滞納している税金も支払わなければなりません。
税金から逃れるために自己破産をしても意味がありません。極端な話をすれば、脱税が発覚して払っていなかった税金の支払いを逃れるために自己破産をしても全く無駄なのです。
1-2.税金以外に免責されない債権
自己破産をしても税金は支払わなければならないことはお分かりいただけたと思います。住民税だけでなく、固定資産税、自動車税、相続税や贈与税など、滞納している税金に関しては全て支払い義務が残ります。
しかし、実は税金以外にも免責できない債権があるのです。
- 健康保険料
- 年金保険料
- 下水道料金
- 保育料
- 違法駐車などの反則金
どういった債権が免責されないかは、破産をする前に弁護士などの専門家に前もって確認しておいてください。
2.税金を支払えない場合はどうすればいい?
それでは、税金を支払う資力がない場合、どのように解決すればいいのでしょうか?
この場合、以下の3パターンが考えられますが、いずれの場合でも「納税の意思はある」にもかかわらず「納税が困難な状態」という前提が必要となります。
2-1.「納税の猶予」を申請する
納税の猶予とは、その名の通り納税をしばらく待ってもらう制度で、国税通則法46条2項に規定されています。
災害や病気、盗難、倒産などで納税が困難になったときに、納税者が申請することで税金を納める期間の猶予をもらいます。
猶予期間は原則1年間で、延長手続をしても最長で2年までとなります。
納税の猶予が認められると以下のようなメリットがあります。
- 新たに滞納処分の執行を受けなくなる
- 既に差し押さえを受けている財産がある場合、税務署に申請して差し押さえを解除できることがある
- 納税の猶予が認められた期間中は、延滞税が全部または一部免除される
2-2.「換価の猶予」を申請する
一定の要件に該当する納税者に対して、財産の換価処分を猶予して税金の分納を認める制度です。徴収法151条に規定されています。
換価処分とは、差し押さえた納税者の財産を売却してお金に換え、滞納された税金の支払いに充当するものです。
「一定の要件」には、以下のものが該当します。
- 財産を差し押さえて換価された場合、事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがある
- 財産を直ちに差し押さえて換価するよりも、猶予したほうが徴収上有利と認められる
換価の猶予は、かつては税金を徴収する側の職権で行われましたが、平成27年からは申請制になったので、申請して承認されれば換価の猶予を利用できます。
職権による換価の猶予も行われていますが、申請した方が早く処理してもらえる傾向があります。
2-3.「滞納処分の執行停止」をお願いする
既に滞納処分が行われている場合には、「滞納処分の執行停止」をお願いするという手もあります。徴収法153条に規定されています。
滞納処分の執行停止は、税金を徴収する側の職権で行われるものです。申請することはできませんので、申請書ではなく嘆願書を提出して「お願い」することになります。
滞納処分の執行停止が行われる条件には、以下の3つがあります。
- 滞納処分を執行するための財産がない
- 滞納処分を執行することによって、生活を著しき窮迫させるおそれがある
- 滞納者の所在が不明かつ滞納処分を執行することができる財産が不明
3.税金滞納でお悩みの場合は一刻も早く対処すべき
自己破産手続の開始が決定されるまでに税金の滞納処分が行われていた場合、財産の差し押さえを受けることがあります。
破産手続の開始後は新しい滞納処分をされることがありませんが、自己破産をしても一切構わず新しい税金の支払請求が来ます。
このように、自己破産をしても税金や社会保険料などは免責されません。自己破産をする際には、免責されない債務を優先的に支払っておくべきと言えます。
弁護士などの専門家に相談すれば、自己破産後も免責されない債務についてどう対処すればいいのかアドバイスしてくれます。
自己破産の前には、専門家(弁護士・司法書士)に相談することを強くお勧めします。
また、自己破産をした後で税金などの免責されない債務に悩まされているのであれば、一刻も早く専門家に相談して最善策を教えてもらってください。