低所得者が安心してお金を借りられる生活福祉資金貸付制度と申込条件

「今月生活していくために、あと10万円が必要……。でも収入が多くないので、金融機関の審査に通るかどうか心配」
このように、お金が足りないときほど融資が必要なのに、金融機関は収入が多くない人に対してはきびしい審査をしているというのが現実です。
一般的な金融機関(銀行や信用金庫)でなかなか審査が下りない、とお悩みの方は、生活に困っている方向けに政府や自治体が用意している貸付制度を利用することを検討してみると良いかもしれません。
ここでは、自治体が低所得者向けの生活資金として融資を行っている「生活福祉資金貸付制度」について解説させていただきます。
目次
1.生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、都道府県が一定の条件を満たす人向けにお金を貸し付けてくれる制度のことです。
一般的な金融機関では収入が十分でないことから融資審査に通ることが難しい…という方に対しても、条件を満たせば融資を受けられる可能性があります。
生活福祉資金貸付制度を利用できる対象者の条件として、以下のようなものがあります。
- 低所得者であること(福祉資金・教育支援資金の場合は収入がまったくないと申込みができません)
- 他の制度を利用できないこと
- 返済の見込みがあること
- 貸付を申込む都道府県に住んでいること
- すでに 福祉貸付の連帯保証人になっていないこと
貸し付けを受ける場合の貸付利率は、連帯保証人を設定できる場合には無利息、連帯保証人を設定できない場合には年利率1.5%となります(返済期間は各貸付制度で異なります)。
通常の金融機関でお金を借りる場合に比べて大幅に有利な貸付条件となっていますので、積極的に活用することを検討してみてください。
2.対象者となるための具体的な条件
生活福祉資金貸付制度に実際に申し込むことができる対象者は、以下の3つのうちどれかに該当する人です。
- 必要な資金を他から借りることが困難な「低所得者世帯」
- 障害者手帳などの交付を受けた人が属する「障害者世帯」
- 65歳以上の高齢者が属する「高齢者世帯」
以下、それぞれの対象者のくわしい条件について解説させていただきます。
2-1.必要な資金を他から借りることが困難な「低所得者世帯」
ここでいう低所得者世帯というのは、具体的には住民税(市町村民税)が非課税となる程度の収入のことをいいます。
住民税は年間の収入が100万円以上の方に課税されますから、失業などによって大幅に収入が減少し、毎月10万円未満のアルバイト収入となっている状態の人などが該当します。
なお、住民税の課税ラインについては以下のように計算します。
住民税の課税基準=収入-給与所得控除65万円-課税基準額35万円
※住民税の基礎控除は本来33万円ですが、住民税所得割の課税基準は総所得金額35万円という条件がありますので、実際には上のようになります。
上を計算すると住民税の課税基準を満たさない収入というのは「年間収入100万円」ということになります。
2-2.障害者手帳などの交付を受けた人が属する「障害者世帯」
生活福祉資金貸付制度を利用することができる障害者世帯とは、厚生労働省から身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳、療育手帳のいずれかを支給されている人がいる世帯のことをいいます。
身体障害者手帳には1~7級までの等級がありますが、生活福祉資金貸付制度を利用できるかどうかを判断する際にはこの等級については特に指定されていません。
生活福祉資金貸付制度の窓口となっている都道府県の社会福祉協議会が実際の生活状況などを見ながら審査によって判断することになります。
「うちは障害者世帯とはいっても7等級だから…」というようにあきらめることなく、審査を受けることを検討してみると良いでしょう。
2-3.65歳以上の高齢者が属する「高齢者世帯」
生活福祉資金貸付制度は65歳以上の方が世帯にいる「高齢者世帯」の方も利用することができます。
高齢者のいる世帯では、ある程度の収入があったとしても介護や病気の療養のために高額の費用が発生することが多いため、生活福祉資金貸付制度では高齢者のいる世帯を特に利用対象者として指定しています。
上で見たように「低所得者世帯」では住民税の非課税ラインの年収であることが一つの目安となりますが、「高齢者世帯」に該当する場合には、これ以上の年収がある場合でも利用対象者として認めてもらえる可能性があります。
3.生活福祉資金貸付制度には4種類がある
生活福祉資金貸付制度の対象者は上で解説させていただいた3種類の人ですが、実際に生活福祉資金貸付制度を利用する場合には、利用しようとする方のニーズに合わせて次の4種類の貸付制度が用意されています。
- 総合支援資金貸付
- 福祉資金
- 教育支援資金
- 不動産担保型生活資金
以下、それぞれの貸付制度の条件について確認しておきましょう。
3-1.総合支援資金貸付
総合支援資金貸付は、失業などによって一時的に収入が激減したような場合に貸付を受けることができる制度です(返済期間は10年以内)。 利用する場合の条件として、以下のようなものがあります。
- かつては仕事をしていたが、現在は失業していること
- 申請時の年齢が65歳未満であること
- 自営業・会社経営者以外であること
- 生活保護を受けていないこと
- 公的年金を受給していないこと
なお、現在失業中の人が総合支援資金貸付を利用するためには、ハローワークへの求職登録が条件となりますから、まずはハローワークに相談することから始めることになります。
総合支援資金貸付には、再就職などによる生活再建までに必要となる「生活支援費」、転居のために必要になる「住居入居費」、再就職のために必要な技能習得費用、あるいは借金の整理のために必要な債務整理費用などを立て替えてもらう「一時生活再建費」などの名目で融資を受けることができます。
これらについてさらに具体的な貸付金額や借入条件などを確認していきましょう。
生活支援費
生活支援費として総合支援資金貸付を受ける場合には、原則として3か月間の生活費(2人以上の世帯の場合月20万円、単身世帯は月15万円)の貸し付けを受けることができます。
原則は3か月分の生活費を借りることができますが、状況に応じて最大12か月分まで借りられる可能性があります。
住居入居費
住居入居費は、現在の居住地から転居して新しく賃貸借契約を結ぶために必要となる敷金、礼金などの費用を立て替えてもらえる制度です。
住居入居費として借りられる金額は最大40万円となります。
一時生活再建費
一時生活再建費は、生活を立て直すために必要な費用を立て替えてもらえる制度です。 生活支援費を利用した後、お金が足りない場合のみ申請が可能となりますので注意してください。
一時生活再建費の対象となるのは、再就職のために必要になる技能習得のほかに、家賃や税金、公共料金などの滞納分の一時立て替え、さらには借金の整理を行うために債務整理(任意整理・個人再生・自己破産など)のための費用建て替えが含まれます。
一時生活再建費として借りられる金額の条件は、60万円となります。
3-2.福祉資金
生活福祉資金貸付制度の2つ目は、福祉資金です。 福祉資金は、生業をいとなむために必要な経費や、福祉介護サービスを受けるために必要な経費、災害を受けたことによって必要になった資金などを貸し付けてもらえる制度です。
ごく簡単に言うと、やむをえない理由によりまとまったお金が必要になった人が、自らの収入ではとうていまかなえない…というような状況にある場合に利用できる貸付制度ということになります。
貸し付けの限度額は580万円となりますが、資金の具体的な用途に応じて貸付上限額は異なります。
例えば、福祉用具等の購入に必要な経費として利用する場合には貸付上限額は170万円、災害を受けたことにより臨時に必要となる経費として利用する場合には貸付上限額は150万円といった具合です。 なお、福祉資金の返済期間は20年以内となります。
3-3.教育支援資金
生活福祉資金貸付制度の4つの制度の3つ目は、教育支援資金です。
低所得世帯に属する人が、高校や大学、または専門学校に通うための資金が必要な場合で、自らの収入ではとうていまかなえないに利用することができます。
学校を卒業してから6か月を経過した後から起算して、20年の返済期限で返済する必要があります。
借りられる金額は通う学校の種類によって以下のように異なります。
- 高校の場合:月3万5千円以内
- 高等専門学校の場合:月6万円以内
- 短期大学の場合:月6万円以内
- 4年制大学の場合:月6万5千円以内
ただし、特に必要な場合には上の各上限額の1.5倍の金額までであれば貸し付けを受けることができます。
3-4.不動産担保型生活資金
生活福祉資金貸付制度の4つ目は、不動産担保型生活資金です。
生活していくためには収入が少なくて困っているが、居住用の不動産は所有しているというような場合に利用することができます。
具体的には所有している居住用不動産に担保権を設定し、その土地評価額の70%程度までの融資を受けられるというものです(ただし、月額30万円以内です)。 貸付期間は融資を受けた人が死亡するまでの期間、または貸付元金と利息の合計額(貸付元利金)が貸付限度額に達するまでの期間となります。
貸付利子は年3%と長期プライムレート(平成29年7月11日現在で1.00%です)のどちらか低い方の利率が適用されます。
3-5.その他の注意事項
以上、生活福祉資金貸付制度の具体的な貸し付け条件などについて解説させていただきましたが、生活福祉資金貸付制度はあくまでも「貸付」の制度であることに注意してください(生活保護や失業保険のような「支給制度」ではありません)。
貸し付けの制度である以上、返済ができる見込みが全くない場合には申し込みをしても結果として審査落ちとなってしまう可能性が極めて高くなります。
多重債務者となっている人はまず債務整理を行うことを検討するほか、定住している住宅がないという状況の方は、生活困窮者住居確保給付金といった別の給付金制度を利用することも検討していみるとよいでしょう。
4.借金がかさんでお金に困っている方は債務整理を!
今回は、失業等によって一時的に収入が激減してしまい、一般的な金融機関では融資を受けることが難しい状態の方向けに、生活福祉資金貸付制度について解説させていただきました。
生活福祉資金貸付制度は低金利で利用できる公的機関の制度ですが、場合によっては債務整理によっていったん現在の借金を整理したほうが解決方法として最適である場合もあります。
債務整理は司法書士や弁護士といった法律の専門家に相談することによって手続きを行うことができますから、必要な場合にはこれらの専門家に相談することも検討してみてください。