個人再生の住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは?利用条件も解説
「個人再生」の「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」というものがあります。住宅ローン特則を利用できれば、マイホームを…[続きを読む]
「ペアローン」とは、夫婦または親子などが共同して借り入れる住宅ローンの一種です。
例えば、夫が3,000万・妻が1,500万のローンをそれぞれ組み、合計して4,500万円の物件を購入します。
似たようなケースに、夫婦それぞれの収入を合算して借入の金額を多くする「収入合算」があります。
この場合は夫婦のうちどちらか1人がローンの契約者となるのに対し、ペアローンでは夫婦各個人が別々のローンを契約し、名義人となります。
この記事では、住宅ローンでペアローンを夫婦で活用し、支払いが難しくなったら個人再生で家を残せるのか?解説します。また、ペアローンのメリット・デメリットも解説します。
目次
ペアローンでマイホームを購入している夫婦の方は多くいらっしゃいます。
しかし、例えば最近流行している新型コロナウイルスの影響などで、もし片方が住宅ローンを支払えなくなってしまった場合は、どうすれば良いのでしょうか。自宅を残して借金を整理する方法はあるのでしょうか?
住宅を残したまま借金を大幅に減額する手続きといえば、個人再生が有名です。
しかし、個人再生で住宅を残すには「住宅資金特別条項(住宅ローン督促)」の要件を満たす必要があります。
夫婦の片方が個人再生を行う場合、この要件を満たすことができません。
住宅に住宅ローン以外の抵当権が設定されていないことが要件の一つなのですが、ペアローンでは抵当権も各人に設定されるため、住宅に「自分の住宅ローン以外の抵当権」がついている状態となるのです。
よって、個人再生でペアローンを組んでいる住宅を残すには、夫婦が揃って個人再生を行う必要があります。
もし、配偶者に内緒で借金を整理したい・流石に夫婦揃って債務整理はできないという方は、任意整理を検討しましょう。
任意整理ならば、住宅ローン以外の債務を個別の交渉で減額してもらうことができます。
しかし、住宅ローンしか債務がない場合は利用できませんので、ご注意ください。
個人再生や任意整理など、借金の整理(債務整理)に関する疑問は、専門家である弁護士に一度ご相談いただくことをお勧めします。
「ペアローンを組んでいるが住宅を残したい」というご希望を加味した上で、弁護士があなたに最適な債務整理方法をアドバイスいたします。
ペアローンの活用を検討すると良いでしょう。
夫婦が共働きで、相互にそれなりの収入がある場合は、ペアローンで夫婦が別個に団体信用生命保険に加入するのが良いでしょう。
夫婦のどちらかに万が一の事があっても、自分の収入でローンの返済が可能だからです。
ただし、夫婦の一方に退職の予定があるなどで収入が減る可能性がある場合は控えた方が無難です。
最低でも5~7年程度は就労を続ける見込みがあった方がいいでしょう。
片方だけの収入でローンを組むと、住宅ローンの控除額を使いきれない場合があります。このような場合には、夫婦それぞれが住宅ローン控除を使えるペアローンがおすすめです。
ローン契約を複数締結するため契約時の手間や経費はかかりますが、控除で補えば結果として100万円単位でお得になることもあります。
ペアローンならば金額の大きなローンを組めるので、予算を高く設定して満足のできる物件を購入することができます。
通常、借入金額を増やすと返済が大変ですが、ペアローンでは夫婦がそれぞれでローンを組むため、自分のローンを返済していけば問題ありません。合計額が大きめのローンを組んでも、返済が楽なのです。
ペアローンでは、夫婦それぞれが別々のローンを組むため、夫婦が個別に住宅ローン控除の恩恵を享受できます。
通常の住宅ローンは単一のローン契約であるため、契約名義人しか住宅ローン控除を受けられません。
住宅ローン控除による節税メリットを大きくしたい場合には、ペアローンが効果的です。
団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者が死亡または高度障害になった時に、金融機関がローンの残債を支払う保険です。
ほとんどの場合で、住宅ローン契約締結時には団体信用生命保険への加入が必要となります。つまり、夫婦が別々にローン契約を締結するペアローンでは、団体信用生命保険にも夫婦がそれぞれ別々に加入することになるのです。
団体信用生命保険の保障では、夫が死亡すれば夫名義のローンの返済義務がなくなり、妻が死亡すれば妻名義のローンの返済義務がなくなります。このとき、片方の死亡は他方のローンに影響しません。
【具体例】
夫が3,000万円のローンを、妻が1,500万円のローンを組んだペアローンの場合、夫が死亡すると夫の契約分である3,000万円については返済しなくてもよくなります。
妻は自分が組んだ,1500万円のローンのみを返済すればいいのです。これに対し、住宅ローン契約が単一だった場合、例えば夫が4,000万円のローン契約を結んでいたら、夫の死亡時には団体信用生命保険によって4,000万円のローンが返済され、妻にローンの返済義務がなくなるのが一般的です。
しかし、妻が死亡した場合は、夫のローンは継続します。仮に妻の収入をローンの支払いに回していた場合、返済計画に無理が生じてしまいます。
ペアローンでは、夫と妻のどちらが死亡してもローンの一部が残ります。一見デメリットに見えるかもしれませんが、残ったローンの返済については、そもそも契約時に自分の収入の範囲で支払えるような計画をしているはずですなので、返済自体に影響は少ないと言えるでしょう。
ペアローンでは2つの別個のローン契約を行うため、契約ごとに書類を揃えなければなりません。印紙代も2倍になります。
また、夫婦各自がローンの審査に通らなければならないため、双方ともにそれなりの年収がなければなりません。
過去の借金状況も審査に関係するので、思わぬ債務履歴が露呈してしまうこともあります。
離婚をした場合、ペアローンで入手した物件の名義変更やローン残高の処理でトラブルになります。
特に夫婦の片方がローンの返済を滞納していると、離婚交渉は難航すること必至です。
離婚時はただでさえお互いに感情的になっていることもあり、泥沼化する傾向があります。
ペアローンで物件を購入した際、その購入した物件の持ち分設定が大切になります。
例えば、夫が2,000万円、妻が1,000万円のローンを組んで3,000万円の家を購入し、家の持ち分を全て夫にしたとします。
この場合、夫は3,000万円の家を2,000万円で手に入れたことになります。残りの1,000万円分が妻からの贈与とみなされると、贈与税が発生してしまうのです。
ペアローンを組む時は、それぞれの借入額に応じた持ち分にしないと思わぬ損をすることになります。
ペアローンと混同されがちなものに、連帯債務や連帯保証による住宅ローンがあります。
具体的にはどのような違いがあるのでしょうか?
連帯債務は、夫婦の収入を合算して審査し、1つのローン契約を結んで借入を行います。
1人が主債務者であり、配偶者が連帯債務者という扱いになります。連帯債務者である配偶者は、主債務者と同じ返済義務を持ちます。
ペアローンと違い単一のローン契約で済むので、契約に関する手間や諸経費はペアローン時より少なくて済みます。
固定金利のフラット35を利用でき、フラット35であれば夫婦共に団体信用生命保険へ加入できますが、保険料はやや高くなります。
しかし、民間の金融機関では連帯債務の住宅ローンを扱っているところが少なく、扱っていたとしても夫しか団体信用生命保険に加入できない場合があります。
なお、主債務者と連帯債務者の両方が住宅ローンの債務者という扱いなので、ペアローン同様に夫婦それぞれが住宅ローン控除の恩恵を受けられます。
連帯保証の場合も連帯債務と同様に夫婦の収入を合算して1つの住宅ローン契約を締結します。1人が主債務者、配偶者が連帯保証者となるのです。
連帯保証の住宅ローンでは、保証人である配偶者はあくまでただの保証人であり、住宅ローンの債務者ではありません。従って、住宅ローン控除を受けることができません。
特に目立ったメリットがあるわけではないので、可能であれば他の形式での借入を検討した方が良いでしょう。